第百八十話 “ 一番の恩返し ” 11-06~07

本当によかった。

この島に来て。

災害があった事は残念な事だ。
でも。  この島には。  
大きな悲しみを上回る程の。  人と人との絆があり。
優しさが溢れている。
それを肌で感じ目の当たりに出来た事が。
本当によかった。

自分は恩返しにやって来たのに。  返す恩は増すばかりだ。
ボランティアで駆け付けたお宅を片付けて。
『ありがとう。本当にありがとう。』と。
疲れた表情の中に精一杯の笑顔を見せてくれる島の人。
そんな笑顔を見て。
『よし!明日も頑張るぞ!』と。
自分が逆に元気をもらっている事に気付く。

旅の前半。
自分が受けたその途方もなくたくさんの優しさ親切に対して。
どうすればいいのかわからなくなり。
モヤモヤしていた時。

『君がそうやって旅している姿を見て元気をもらえた!だからそれで50:50だよ!』
また。  その優しさに恐縮し。  お礼ばかり言っている自分に一言。
『give and takeだ。』
と言ってくれた人。


その時はその気持ちを。  全て理解する事はできなかった。
でも。
今は少しその気持ちがわかる気がする。
人と人は支え合って生きているんだなぁ~。
と。

今日で。
住用町に置かれた災害ボランティアセンターは閉じられた。
明日からは。
各ボランティア団体が現場に入ると話しに聞いた。

一般のボランティアの参加は今日が最後だった。
決して全てが元通りになったわけではないが。

やるべき事はまだ山のようにある。
ただ。  一つの区切りではある。

一週間足らずの短い期間ではあった。
でも。  充実した毎日だった。
今、心の中が満たされている。

どうやら。  旅を終える日が近いようだ。

日本海を下り。  九州入りした時のような。
旅への未練や執着心は無くなった。
何がどうとかこうとかではない。 この旅を終える心の準備が整った。
と、そう感じる。

結局。  恩返しなど一つもできなかった。
でもそれでいいのかも知れない。
もちろん簡単に返せる恩ではない。
でも。
一番の恩返しがわかった。

それは。  これからずっと。
今のこの気持ちを持ち続ける事にある。
と。
それに気付けた。

だから。  ようやく。  旅を終える心の準備が整ったのだろうと。
そう思った。

ではまた!