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第百六十一話  “ 南へ西へ ” 10-21

唸る風の音が。  一晩中鳴り響いていた。

目を覚まし薄暗い外を見る。
ほっ♪
雨は降っていない。
ただ、相変わらず風は強い。

身支度をすませ。
子猫にバイバイしてから出発。
まずは道の駅へ。
昨日、Mさんが明日も朝からここにいると言っていたので。  お礼を言いに向かう。

道の駅に着き昨日もお世話になった売店の方に挨拶を。

Mさんは何やら打ち合わせ中のようだ。
少し離れた場所からMさんに頭を下げた。
すると。
自分の所まで来て下さった。
『ありがとうございました!』と固い握手をした。

昨日。
ここは島だから。  と、Mさんはおっしっていたが。
Mさんならきっとどこにいても、困っている人に手を差し延べるだろう。
そういう思いやりと優しさの滲み出た方だった。

さて。
早く橋を越えて元のルートに戻らなければ。

早くしないと、橋が強風で通行止めになる。
と、教えてもらったからだ。

そしてこの橋を渡るのに。
今までに経験したことの無いような猛烈な風と闘う事になった。
とても自転車に乗っては渡れない。
自転車を押して進む。
左から吹き付ける風に今にも吹き飛ばされそうだ。

ちょうど。
左側にショルダーチャージをするような感じで足を踏ん張りヨロヨロと…。
風上に顔を向ければ呼吸さえままならない。
着ている服はバタバタとものすごい音を立てている。
背中に背負ったバックパックのベルトが。  風に煽られバシバシ顔にあたる。

痛い…。
が、どうする事も出来ずやられっぱなし。

写真ではとてもこの風の威力を伝えられない。
どう説明すればわかるだろうか。
自分の坊主頭に短い髪形が。  左から右にかけて7:3分けになってしまう位の強風だ(笑)
ツンツンした髪の毛を風に颯爽てなびかせて。

なんとか難所を乗り越え。  ルートに戻った。
それから進路を南に取り。  港町へやって来た。  西へ向かう船に乗るためだ♪

今日はターミナルで一夜を明かし、明日の朝の便に乗ろうと考えていた。
が。
聞いて見ると。  ターミナルは夜閉まるらしい。
どこと無く。  デンジャラスな雰囲気のこの港町。  野宿するにはかなりの勇気がいる。

ふと見た時刻表に。  17時発の便を確認。  島への到着は20時。
決断にそう時間はかからなかった。
島に行こう!
と。

今日はここまで♪

ではまた!

 

~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十三話 “ 月の白虹 ” 10-22

真っ暗闇の島の港付近を。   うろうろさまようも。
この風をかわせる野宿場所は見つけられず。
結局、港に戻りテントを張った。


翌朝。
港の朝は早い。  5時過ぎには目を覚ました。
この島を出る始発の船便は6時過ぎだ。
島民の方達がターミナルに集まってくる。
も。
皆、引き返していく。
ん?
と思ったら。  強風の為、欠航。

もし昨日の夕方。
あの船に飛び乗っていなければ…。
しかし。
逆に言えば。  今日は島から出れない(笑)

まぁそれはいい。
まだ薄暗い島を探検だ♪
風向きを考慮し。
入手しておいた島の観光地図を見て目的地を決めた。

それにしても風が強い。

利尻島もそうだったが。  島の風はすごい。
向かい風になると。  平坦な道ですら、すごい労力を必要とする。

島のメインストリートを通るも。  まだほとんど人はいない。
途中にあった島の神社に立ち寄り。
『おじゃまします。』と挨拶をした。


海沿いへ向かう。
さらに勢いを増す風。
雲の隙間から太陽が見えて来た。

遠くに島影も見える。

いったい何と言う島なのだろうか。
そしてこの後。  くねくねした道を進んで行き。

海が見える度に足を止めた。

白波は至る所で確認出来るが。

探しているものとは違う。

まぁそう簡単には見つからないよね(笑)
と思っていた時。
小さな岬をまわり。  たどり着いたビーチを見て。
全身に鳥肌が立った。
ゾクゾクした。
こんな出会いを求めていた。
強風に煽られて決していいコンディションではない。
でもそこにあるのは。

波だ。

自分の目の前には確かに波がある。

まさか初日からこんな光景に出会うとは。
写真を撮るのも忘れて。  しばらく立ち尽くしていた。

今度は夢中でシャッターを切っている自分がいた。

ドキドキした。

一時間位、猛烈な風と闘いながらその場にいた。
この風が止んだら。
と、そんな光景を思い描きながら。

いったん港に引き返そうとなぜだか思った。
途中、休憩していると。
島のおばちゃんが、話しかけて下さった。

おばちゃんの落花生干しを手伝いながら話しをした。

島に特産品がないので試しに落花生を栽培しているらしい。
沖縄にあるジーマミ豆腐(落花生のお豆腐)の話しをすると。
すごく興味を示してくれた。

ふと。
さっき見たビーチでサーフィンをしている人を見た事があるかを聞いて見た。
『よそから来た人がたまにおるねぇ~。』と♪
さらに。
『この島にサーフィンしている人はいますか?』と聞いてみると。
どうやらいないらしい。

ともあれ。
あの場所でサーフィンが出来るのは間違いなさそうだ。
しかしあの風では…。
もし、無理にサーフィンをして。
万が一自分が事故や怪我をすれば島の方に迷惑がかかってしまう。
この風が明日の朝。  止んでくれれば。
と、祈るような気持ちだ。

おばちゃんにお礼を言った後。
いったん港に戻る事にした。


その頃になると。
島の方達をチラホラ見かけるようになったので。
挨拶♪挨拶♪と。
こんな季節外れに。
どう見てもおかしな輩が島をうろちょろしているのだ。
こちらからしっかり挨拶しなくては♪
『おはようございます!』と。

その途中。
『おはようございます!』と挨拶をしたおじさんが。
『どっから来たとね?』と、話しかけて下さった。
『これはなんね?』とサーフボードを指差すおじさん。
説明すると。
『前にサーフィンしてた人がおるよ♪』と貴重な情報を教えて下さった。

教えて頂いた場所に行ってみると。

今は使われていないサーフボードが敷地内の片隅に。


お店を尋ねてみる。
『~かくかくしかじか~』でと。
やはり、今はやっていなくても。
島のローカルさんに話しを聞かなければ落ち着かないのだ。
残念ながらTさんの写真はNGだったが。
『この島は特に問題ないよ♪』と。
ポイントの写真もサーフィンも何の問題も無いとの事だった。

*ポイントの画像はローカルさんの許可を得て掲載させて頂きましが島名地名等はあえて伏せさせて頂きます。ご了承下さい。

初日からこんな幸運に恵まれるとは思ってもいなかった。
もしかしたらと立ち寄った島で。  サーフィンの存在に出会えたのだから。

明日の朝。  風が落ち着き。  波があれば。
海に入らせて頂こうと思う。
もしコンディションが整わず、サーフィン出来なかったとしても。
波に乗る事だけがこの旅の目的地ではない。
こうして。
この島の波に出会えただけで。  価値のある事だ。
しかし。
今現在も吹き続く風…。

まぁ、明日は明日の風が吹くか♪
そんな事を思いながら。  ふと、夜空を見上げると。
そこにはもう少しで満月になりそうな月が出ていた。
そして月のまわりには。
白い虹が輪のように輝いていた。

この白虹も。
今、この島にいるから見れたのかな~と。
夜になりひっそりと静まり返った。
そんな島の夜だった。

ではまた!

*奄美大島での災害のニュースをフェリーターミナルのニュースで見ました。
旅の最後に立ち寄ろうと考えていましたが、島民の方の今の心境を思い、またの機会にしようと思います。

 

~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十四話 “ ふかふかの砂浜 ” 10-23

朝4時。
目が覚めた。

そのままじっと。   テントの中で外の様子を伺う。
風が昨夜よりは少し弱まっている。
ジジジィ~♪とテントのファスナーを開け。  まだまだ暗い外に出てみる。
冷え込みはない。
風をかわす建物の西側から東側に行ってみると。  びゅおぉぉ~♪と風が吹き抜けた。

あぁ…。

とはいえ。  昨日とは若干風向きが変わっている。  ような気がする。
これは実際海に行って見ないとわからない。

5時には片付けを済ませ。  準備万端だが、まだ暗い。
東の空をずっと眺め明るくなるのを待った。


ほんのり明るくなって来たのを見計らい。
昨日のビーチへ向けペダルを踏み込んだ。

ドキドキする。  初めてのデート♪  待ち合わせ場所に向かう気分だ。

近づくに連れ。  期待と不安でペースが遅くなった。
あと10㍍で海が見える最後の坂の手前で。
ふぅ~。  と、深呼吸した。
彼女は来てくれているだろうか。

とりゃぁ~!
と、気合いを入れ逆風に煽られながら短い坂を上がる。
すると。
昨日会った時とは違う印象の彼女がそこにいた。


オンからサイドオン気味になり。  昨日よりはやや弱まった風。
サイズは下がり面は乱れがちだが。  初デートには十分だ♪

支度を済ませ海へ。

『いただきます♪』

しかしサイドオンの厚めの波。

彼女と中々コミュニケーションが取れず…
でも次第に緊張もほぐれたのか。  だんだん慣れて来た♪
たまに。
思わせぶりな彼女の仕草に惑わされながらも。  会話が弾んで来た(笑)



一瞬。  波が途絶え。  不思議な静寂を感じた。
ふと。
回りの景色を見渡した。
目に映るのは手付かずの大自然。  人工物は数える程しかない。
そんな時。
自分という存在が。  ものすごく小さく感じられる。
でも。
それでいいと思う。
大自然の中に身を置き。  自然の恵みを五感で感じ。  自分の存在が小さくなればなるほど。
波は"いい波"になる。
と、自分はそう思う。

一羽の鳥が。  風に逆らい羽ばたいた。
もちろん前には進めない。
でも。  その鳥は。  空高く舞い上がった。
それを見て思った。
自然には逆らえない。
でも。
共に生きていく事は出来ると。

ある時。
その日の風とうねりの向きを考えながら。  地図を見ていた。
すると。
オンショアにはなるが。  うねりの方向に向いた○○浜というビーチを地図上で見つけた。

もしや!  と、思い。
そのビーチに向かって見た。
ちょうど昨日、この島の波を探していたのと同じようなドキドキワクワクな心境で。
やっと近くまでたどり着き。
坂を下り見えてきた海岸には。

ビーチを囲むように人工物が規則正しく並んでいた。

がっかりと言うよりは。
どこか寂しかった。

護岸というのはわかる。
しかし。
太古の昔より。  自然というのは変化し続けて来たのではないだろうか。
気の遠くなるような。  長い年月をかけ。  今の形を成形し。  なお変化し続ける。
その流れを人間の利害だけで止めていいのだろうか?
人工物で岸を護る前に。
もっと他にすべき事があるのでは…。
と。

数日前。
強風の橋を渡りたどり着いた島。
自分に一晩の宿を紹介して下さったMさんの。
『ここは島だから。』  の言葉の意味がまた少しわかった気がする。

島では限られた環境の中で。  島人同士助け合って生きている。
そして。
自然と密接に共存しあっている。

時に自然の脅威にさらされ。  時に自然の恵みを享受する。
そして自然への畏怖の念と。  感謝の気持ちが生まれる。
その自然への感謝の気持ちが。  島の人の温かさであり優しさなんだと。

それが島であり。
『ここは島だから。』
なんだと。

海から上がり。  ふかふかの。  手付かずの。  自然のままの砂浜を。
裸足で歩きながらそんな事を考えていた。

港に戻る。
次の島へ行こうと。
午後に出港した船は。

目的の島の手前の島までしか行かない。

その先の島に渡る船は。
翌日の、まだ夜も開けない深夜発だ。
今日は寄港した島で野宿になりそうだ。

ではまた!

*島の皆さん!声をかけて下さったり応援して下さったり。本当にありがとうございました!

 

~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十五話 “ ご注文はお決まりでしょうか♪ ” 10-24

パラパラ♪  ポツポツ♪
そんな音に目を覚ました。

久しぶりだ。  テントの中で雨の音を聞くのは。

フェリーターミナルの駐輪場に張らして頂いたテントを。

軒下に移動する。
雨の降りだしから僅か30秒の早技だ♪
そして。
何事もなかったようにすぐに眠りに着いた。

深夜? 早朝?  AM3:55起床。
最近早起きだが。
何もおじいさんになった訳ではない。  フェリーの出港がAM5:00なのだ。
今日も荷物を半ば強引に押し込み。
準備完了。

窓口でチケットを購入。

する前に。  一計を案ずる。
どの港に降りるべきか。

理由はこうである。
実は。
最初に立ち寄った島でお会いしたTさんが。  とても重要な事を教えて下さった。
『○○島にKYOさんという、この辺りの島のまとめ役がいるから訪ねて見たら?』と。
『すごく面倒見のいい人だから♪』ともおっしゃっていた。

そして。  翌日。
次の島へ渡る船を待っている時。
Tさんがターミナルに来て下さった。
『今日、明日。KYOさんの所で大会があるらしいよ♪』と。
島で行われるサーフィンコンテスト。
ぜひ見てみたい♪  何より、島のサーファーさんに会ってみたい♪
出来る事なら今日、その島に渡りたいが。  あいにくその島に行く船が無い…。
途中の島を経由して行かなくてはならない。

そして昨日。  この島に着き。  今から目的の島に向かおうとしているのだが…
しかし。
一つ大きな問題があった。
それは。
コンテスト会場も。  そもそも。  サーフポイント自体がわからないのだ。
それはTさんも同じだった。

でも。
その方が面白い。  探す楽しみがある♪  ここです!と地図にマークがしてあったら。
ただただそこに移動するだけの作業になってしまう。

そんなこんなで。
今、ターミナルのベンチで一計を案じている訳だ。
しかも、出港の時間は刻々と迫って来ている。

その島には二つの港がある。
正確には別々のしまだが。  北の港と南の港がある。
そのどちらに降りるかを迷っているのだ。
無い頭をひねった。
まず。
大会を開催するには波が必要だという事。
もとより波情報など存在しない。   風やうねりの向きを参考に。  島の西側か東側かを決める。

問題はその次だ。
北から探すか南から探すか。
縦に長いこの島だ。
しかも。
この辺りの、大小様々な島を見る限り。  島というより。  海に山がそびえている。
そんな感じだ。
そんな島の道は当然容赦ない峠の連続だ。
この選択を間違えれば。  タイムアップで終了♪も十分有り得る…

入り組んだ海岸線。  地図と真剣な睨み合いが続く。
しかし時間が迫る。
焦る…。

こんな時は。  頭を真っ白にして。  発券窓口に向かう。
選択肢は二つだ。
乗船券を買うその瞬間に決めよう。
と、そう決めた。

この方法はファミリーレストランなどに行った時にしばしば使う。
お腹が空いている時に。  あんなに美味しそうなメニューの写真がいっぱい並んでいたら。
当然。  迷う。
出来る事なら全部食べたいが。
その中から一つを選ばなくてはならないのだから。
二つ三つ位までは選択の幅を縮める事が出来るが。
最後の決断が出来ない…。

そんな時は。
ポチっ♪と呼び出しボタンを押す。
まだ決まっていないにも関わらず。
そして。
店員さんが近づいて来るのに焦燥感を感じながら。
『ご注文はお決まりでしょうか♪』
の問いの直後に頭に浮かんだメニューを頼むのだ。
きっとその時に頭に浮かんだご馳走が。  自分の一番食べたかったものなのだ。
と、思っている。
ので。  今回もそうする事にした。

『おはようございます!え~…っと。ここまで大人一人と自転車をお願いします♪』
こんな時。
毎回思うのだが。  結局最初から答えは出ていたのではないかと思う。

そうして。
降りしきる雨の中。

フェリーに乗り込んだのは今朝5時の事だった。

続く♪

 

~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十六話 “ 島の宝 ” 10-25

朝5時に出港した船が目的の港に着いたのは7時を過ぎた頃だった。

雨はいよいよ本降りだ。  寒い…。
でも。
寒さにめげるより。  大会会場は見つかるだろうか?
KYOさんという方や島のサーファーさんはどんな人なんだろうか?
波は?  など。  いろんな事が頭を過ぎる。

小さな島から大きな島へ移動する。
そこからさらに。  島の反対側まで一山越えて行く。
どうやら。  登り切ったようだ。

今度は急な下り坂と急カーブ。
こんな雨の日は慎重に慎重に坂を下って行く。

しばらく行くと。
島の反対側の海が見えてきた。
それだけではなかった。
入り江のような場所に。  ラインが見えた。

うねりだ♪
どうやらここが。  きっと大会をするならここに違いない!と。  目星を付けたビーチのようだ。

一気に坂を下る。
ビーチに着いた。
その次の瞬間。  ここだぁ♪  と、確信した。

駐車場に置かれたサーフボードと。


ジャッチ席のような場所。

しかし。
まだ早いのか。  サーファーさんの姿がどこにもない。
軒下で雨宿りしながら。  様子を伺っていた。
すると。
一目でサーファーさんとわかる人がこちらに歩いてくる。
『おはようございます!~かくかくしかじか~で。』と言うと。
『KYOさんならこっちにいるよ!』と、海を見渡すロッジに案内して下さった。


ロッジのドアーが開かれる。
そしてそこに現れた方がKYOさんだった。
挨拶をし。  経緯を説明すると。  KYOさんはニコッ♪と笑ってこう言った。
『繋がったね~♪』と。
この一言でKYOさんがわかった気がした。
そして『さぁ上がって上がって♪』と、おっしゃって下さったが。
何しろ自分はずぶ濡れだ。  中に入るのはちょっと申し訳ない。
大会は10時頃からだと言う事なので。
それまで待って。  見学させて貰う事にした♪

外で雨宿りをしながら海を眺めていると。
波をクリーンにしてくれているオフショアが寒い…。
ガタガタ震えていると。  それを見兼ねたサーファーさんが。
『遠慮しないでこっち(ロッジ)来なよ♪シャワーもあるしさ♪』と。

寒さに震えていた自分は。  シャワーの誘惑に負け。
迷惑をかえりみず。  ロッジにおじゃました。

そこにいらしたサーファーさん達に挨拶をした。
すると。
『今日ここに来たのも何かの縁だね♪』と。
この大会は。  ずっと延期になっていたらしい。
そして。
ようやく開催の日を迎えたこの日に。  ふらふらやって来た自分。  
一年365日ある中で。  今日と言う日にここにたどり着いた事に。  感謝だ。

徐々に集まり出したサーファーさん。


だんだん賑やかになって来た。
大会本部席をロッジに移し。
後は潮が引くのを待つばかり。
朝一は上げいっぱいでうねりがそのままショアブレイクになっていたが。
徐々に引き出しブレイクし始めた。

そして。


赤いフラッグが緑に変わった。


プァ~ァ~ァン♪  と。
第2回 SWANKY DROP SURF CONTESTが開催した。

この島のサーファーさんはもちろん。
隣の島のサーファーさんや近隣の県からの参加している方もいらした。

今までサーフィンの大会をキチンと見た事がなかった自分。
こんなにも楽しいものだとは思わなかった。
ここには。
笑顔がたくさんあった。
今日と言う日を目一杯楽しんでいるサーファーの姿がたくさんあった。
夢中で大会を見ていた。

すると。
会場のマイクを通して。
『やなっちさん♪やなっちさん♪うどんが出来たので食べてください♪』とKYOさん。

この島のうどんだ。


美味しい♪  思わずおかわりしてしまった(笑)

ビギナー ・オープンと大会は順調に進んで行った。


途中、晴れ間も出で大会を歓迎してくれているようだ。


午後。  大会は無事に終わった。

『待ちくたびれたでしょ(笑)』とサーファーさんが声をかけて下さった。
『楽しんで行ってね♪』とは海へのGOサインだった。
『おじゃまします!』

岸から見ていたのとはだいぶ印象が違う波だった。
でも。  すぐにコツを掴めた♪
これも。
今までたくさんのポイントで波乗りをさせて頂いたおかげだ。

とにかく楽しかった。  夢中になって波乗りをした。
大会の片付けも終わった頃。  皆さんも続々と海に入って来られた。

ジャッチをされていた、この島人として。
初めて宮崎で波乗りをしたという島のLegendさんもパドルアウトして来た。
『おじゃましてます♪』と言うと。
ニコッ♪として。  『"いい波"乗ってるね!』
と、自分に声をかけて下さった。

なぜだか。  その言葉が。  ものすごく嬉しかった。
それは自分が形のいい波や大きなセットに乗ったからでも。
上手に波に乗ったからでもなく。
自分が波に乗り楽しんでいる姿を見て。
そう言って下さったんだと。

その言葉をそう理解したからだ。

大会の途中でオフからオンに変わった風も落ち着き。
潮の上げと共に刻々と表情を変えて行く波。
いつしか。
ローカルさんも。
『いい波だね♪ここ最近では珍しい波だよ♪』と顔から笑みをこぼしていた。

海から上がり。
KYOさんの姿を探した。
ちょうど海に入ろうとしている時だった。
『大会お疲れ様でした!』と声をかけた。
すると。
ホッとしたような表情をしたKYOさん。
ずっと順延していた大会を開催できた安堵の表情だった。

KYOさんはこの島の出身ではない。
大阪に生まれ巡り巡ってこの島にやって来た。
そしてこの島の波に出会い、今こうしてここにいる。

こんな事を言っていた。
『この島の素晴らしさをもっともっと島の若い子達にわかって欲しいんだ』と。

サーフィンを通じて、その素晴らしさを知った若いサーファーさん達。
綺麗な海と自然が与えてくれるこの波を。
これからもずっと。  次の世代。  またその次の世代へと。  引き継いで行くのだろう。

この島の。  宝として。

*KYOさん始めたくさんの皆さん。
今日と言う日にご一緒出来て本当に嬉しかったです。
皆さんの暖かさを忘れません。

本当にありがとうございました!

 

~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十七話 “ エピローグ ” 



明日から。  海は大荒れになるらしい。
それを知ったのはフェリーターミナルだった。

まんまと次の島行の便に乗り遅れた自分。
その島へ行く船が出るのは。  明日の夕方発らしい。

そんな話しを窓口で聞いている時だった。
カウンター越しの切符売り場の女性の方が。
『まぁ欠航にならなければ♪ですけどね♪』と。

その言葉が気になり。  残り少ない携帯の電源を入れ。
天気予報を確認した。

…これはまずい。
直感的にそう思った。

夕方頃には確実に欠航になりそうな荒れ模様。
しばらく考えた。

朝一番の長崎行の便が出港するなら。  それに乗って島を離れようと。
そう決めた。
それに。  もう十分だった。
最後の島にいけなかったとしても。
今日という日があまりにも印象的だったからだ。

失礼ながら。
今まで名前も聞いた事が無い島へ。
もしかしたら♪  と、突然渡り。
こうして島の波と。  サーファーさんに出会えた事。
優しさ温かさに触れられた事。

KYOさんが。
ゆっくり話しも出来ず、なにかもっと他にしてあげれた事があったんじゃないかと…。
と。
こうしてお会いできた事。
島のサーファーさんが楽しみにしていた大切な時間を一緒に過ごせた事。
何より。
この西の島々で出会えた。  たくさんの笑顔と"いい波"が。  最高の歓迎でした。



翌朝。
朝一番の長崎行のフェリーは出港した。
こうして。
自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録は幕を閉じていく。

離れて行くしまなみを見ながら。
ふと思った。
『そういえば日本って島国だったよなぁ…』
と。

*短い島旅でしたが応援して下さった島の方や野宿させて頂いたフェリーターミナルの関係者の皆さん。

本当にありがとうございました。

 

第百六十八話 “ 長崎そして熊本へ ” 10-26

島旅から長崎に戻ったのは午後だった。


弱い雨が降ったり止んだりだ。

せっかく長崎に来たのだから。

ここにだけは行っておこう。
そして。  これだけは見ておこう♪  と。  ある場所へ向かった。

それはこんな場所で。


そして。
この門をどうしても見てみたかった(笑)




寄り道を終え。
電源確保と溜まった洗濯物を何とかしなくてはと。  今日は長崎市内の安宿へ。
洗濯を終えると。  すぐに眠りについてしまったようだった。

12時間後。
目が覚めた。
まぁ良く寝たものだと自分で自分に感心してしまった。
宿のご主人が素泊まりにも関わらず。  朝食をご馳走して下さった♪

お礼を言い出発。
外に出ると。  昨日までとは違う空気。

寒い…。

そして北風がビュービューと。  これは木枯らし一号?
などと思いながら。  半島を周り。


熊本・天草へ向かうフェリーに乗った。


夕方、到着した天草の地。
少し港の辺りをさ迷っていると。

今乗って来たフェリーの最終便が欠航になったと町内アナウンスが流れていた。
それもそのはず。
登り坂なのにグングンスピードが増していく。
南に向かう自分を急かすように。

しかし。
今日の寝床にあてが無い。
祈るような気持ちで野宿ポイントを探す。
この風ではよっぽど風をかわす場所でなければテント厳しい。
この寒さでどこも見つからなければ…。

相変わらず北風は背中をグングン押している。


そんな時。  ふと。  バス停が目に留まる。

屋根♪  壁♪  ベンチ♪  ・・・・・・カ・ン・ペ・キ♪

今日の寝床はここにした。
しかし。  冷える…。
長袖二枚にフリースさらにレインコート。
雪だるまのように服を着込み。  ズボンの下にはヒーターテック。
そして全く人気の無い海辺の暗いバス停。
唸る風にきしむバス停。

なんだか。    すごく。  心細い…(笑)

ではまた!

 

第百六十九話 “ M.I.B ”  10-27

とうに夏も過ぎ。  秋を通り越し。  冬の足音が聞こえ始めた。
こんな季節外れ…

------------------------------------------
草木も眠る丑三つ時。
バス停の天井から。  ボタッっと。  何かが降って来たような音がした。
しかし。
恐怖に怯え。  ようやく眠りに着いたばかり。
この時は眠気が勝った。

zzz♪
眠りに着くまで。  徐々に暗くなって行くころから。  やけに怯えていた自分。
何か。
ただならぬ雰囲気を。  どこか感じていたのだろう。

時は経ち。  辺りは漆黒の闇。  明かりは近くの自動販売機のみ。
車の往来もまったくない。
不気味に風が唸り声をあげ。  木々がざわめく。
ガラス張りのバス停。
嫌でも真っ暗な外が見えてしまう。
恐怖心を紛らすために歌ってみても。  どこか尻つぼみになってしまう。
結局、文明社会の象徴とも言える携帯電源をいじくり回して。  気を紛らわしていたら。
貴重なバッテリーを一つ使い果たしてしまった…。

流石にそんな自分が情けなくも、バカらしくもなり。  寝袋にすっぽり収まり。
ようやく眠りに着いたのは午前0時頃だったのだと思う。

草木が眠りに着いた頃。
ボタッっと。
バス停の天井から。  何かが足元に降ってきたようだった。
ん?と微かに目を覚ましはしたが。
寝袋のヌクヌク感に引き込まれ。  そのまま朝を向かえたのだった。

目を覚ますと明るく晴れ渡る空にホッとした。

こうして朝を向かえると。  昨夜の自分の怯えっぷりが笑えてくる。
夜中に聞いた謎の音の事など。  すっかり頭にない。
しかし。
この30秒後。  体中に戦慄が走る事になる。

ベンチの隅の。

ちょうど寝ていた時の足元の。
壁のあたりで。   シャカシャカ♪  シャカシャカ♪  と。   何かが。  うごめいた。

ん?
と、その音の方に視線を送った。
次の瞬間。  ゾクゾクゾクッ!っと。  体中に戦慄が走った。

*食事中・体調の優れない方・心臓の弱い方・高血圧の方等は次の画像は見ないでください。
興味本位で見られ気分を悪くされても責任は負いかねます。
さん

 にい

 いち

 ↓
                       ぱおぉぉぉん♪

マッ!マンモス!?
すみません…   画像を間違えました。

では改めて。
*本気で気分が悪くなるかも知れませんので見たくないかたはスルーしてください。
さん

 にい

 いち

 ↓

                          
                           …・・・・・・・・・・・・・・・  ギャァァァ@;※∽‡ΝΔゑ!!!

左斜め前方に勢いよく。
そして。  鮮やかに跳びはねた。
そこにはこの世のものとは思えない形の生物が…   いた…

一人でパニックに陥る。
セットをぎりぎりドルフィンで交わした直後。
更なる大波が波頭がひらめかしているのを見てしまった時のように…。

怖いなら外に出ればいいものを。
遠巻きに。  遠巻きに。  様子を伺う自分。
しばらくじっと対峙する。
どうやら。
口の中から触手を伸ばして襲ったり。
黄緑色の体を溶かしてしまう強酸性の液体を飛ばしてきたりはしないようだ。
しかし。  とにかく。  自分が今までに見たことのない生物だ。
動きも比較的遅い。

どうしようかと迷ったあげく。  出した結論は。

「放置♪」 ・・・・だった。

ふと。
昨夜の音は…
と。
どうやら。  この生物と。  密室のバス停で。  一夜を共にしていたようだ。
それを思うと。  再び鳥肌が全身を覆った。
つかず離れずの距離を取りながら。  一息付いていた。

そんな時だった。
バス停の真横に車を停め。  中から出て来た男性が。  ニコニコしながらこちらに向かってくる。
も、もしや!
トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスが共演した『M.I.B』を思い出した。
ピカッ!と光る謎の閃光で。
見てはいけない生物を見てしまった人間の記憶を消してしまうのだ。

『やなっちさんですか?』とそのエージェントさんが自分に問い掛ける。
『はい…。』と自分。
『~かくかくしかじか~のAです!ブログずっと見てます♪』と。

そろそろ妄想もいい加減にしよう。
自分に会いに来て下さったのは。  ここ天草のローカルAさんだった。

昨日の日記の最後に、何気な~く載せた一枚の夕日の写真。
たったそれだけで、自分の居場所がわかったらしい。
流石はローカルさんだ♪

温かい差し入れを頂き。  飲み物を飲みながら。
ついさっき。  自分の身に起きた出来事と。  その生物をAさんに確認してもらう。
『あっ!ゲジゲジね(笑)』
『えっ?(地球外生命体じゃなくて)ゲジゲジ?こ、これがですか?』と。

今までゲジゲジ=百足(むかで)の事だと思っていた自分は。
ゲジゲジがこんなに恐ろしい姿をした生き物だとは知らなかった。
昨夜一人と一匹で心細い夜を過ごした自分は。
とめどなく。
べらべらと。
少しおしゃべりになっていた。


Aさんはこう言って下さった。
熊本、天草に来てると知って。
波にも地元サーファーにも会えずにそのまま通り過ぎて欲しくなかったんです。
と。
そう言って下さった。
その言葉と気持ちがすごく嬉しかった。
たまに話しは脱線しながらも。  気付けば三時間近く話し込んでいた(笑)

自分はAさんに見送られながら。
『行ってきます!』とその場を後にした。
*Aさんは恥ずかしいから写真も素姓も明かさないで欲しいと。
そう言っていたので画像はありません。

でも、それってやっぱり…MIB!?
*Aさんお話し出来てよかったです!熊本で天草で波乗りはできませんでしたが、ポイントの波の話しを聞き、地元サーファーさんの話しを聞けてよかったです!
本当にありがとうございました!

さて。
雲一つない青空とはこの事だ♪と思いながら。  自転車を快調に走らせ。
Aさんに教えていただいたPに立ち寄り海を見ながら休憩。


ここはどんな波が立つのかなぁ~と。  考えているだけでワクワクする。
そしてその後。
それなりに険しい峠を越え。


鼻歌も飛び出すような海沿いの道を走り。


熊本~鹿児島へ向かうフェリー乗り場にやって来た。

フェリーと言うよりかは渡し船と言った感じだ。
向こうに見える対岸が鹿児島県。  30分の船旅だ。

出港時間をうろうろしながら待っていると。
キリッっとしたYシャツ姿の男性が声をかけて下さった。
今度こそM!I!B!?と思っていたら。

熊本市内のサーファーNさん♪


『さっき車ですれ違って!ここかな?と思って♪』と。

船が出る直前まで話し込んでしまい(笑)
ギリギリ滑り込みで乗船。
*Nさん!まさか!と言う場所で声をかけて頂き驚きましたがありがとうございました!

さて。
早いもので。  もう鹿児島に着いてしまった。
到着した小高い場所から海を見下ろす道の駅。
地図を片手に。  夕方になり広がり出した雲の隙間から。  こぼれ落ちる光の柱を眺めていた。



すると。  なぜだか。  ふと。  一つの答えが出せた。

ここ最近。
何かが心につっかえていた。
『本当にそれでいいのか?』と。  ずっと自問自答していた、そのある事に。
答えが出せた。
そしたらすごく気持ちが楽になった。
でもそれは。  また今度。  改めてお話しする事にします♪

あぁ♪  今日も寒い(笑)

ではまた!

 

第百七十話 “ 恩返しを致したく候 ”



こんなに綺麗な夕焼けは。  初めてかもしれない。
刻々と変化していく表情に。  すっかり見とれていた。
この夕焼けの。  ずっとずっと先に。  何があるのだろうか。
西の。  海の  その先に。

昔。
クラスの中でイジメが起きた。
子供は時に残酷な悪魔にもなる。
担任の先生がこう言った。
『クラスの中でイジメられてる子がいて、みんなそれをわかっていながら何もしなかったの?』
…。
『それじゃあみんなでイジメているのと同じじゃないですか?』と。
その言葉に。  子供ながらにショックを受けた。
確かに自分は何もしていない。
なのに。
イジメたのと一緒??  なんで?  なんで?

先生の問いに。  小さいなりに必死で考えた。
見て見ぬ振りをして。  助けようともしなかった。
つまりそれは。
同罪って事だ。
それに気付いた時。  何とも言えない。  モヤモヤした気持ちになったのを覚えている。

あの日から。  昨日まで。  どこかその時の気持ちに似た。
モヤモヤとした物が心の中にあった。

そして昨日。
自分の中で一つの答えが出た。
そして今日。
この真っ赤に染まる夕焼けを見て。  心に決めた。   『行こう!』と。

何も出来ないかもしれません。
でも。
小さな事でも。  何か出来るかもしれません。
ただ何もせず。  そのまま通り過ぎると決めた事に。  ずっと違和感を感じていました。

『災害があったので立ち寄りません。』
本当にそれでいいのかなぁ?
と。
そんな時にふと目に留まったある方のブログに。

http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=love-song0520&articleId=10688189196&frm_src=article_articleList&guid=ON

そこに。
答えがありました。   モヤモヤも消えました。

なので。
沖縄にゴールする前に。   奄美大島に行きます。

自分にも出来るかも知れない何かを探しに。
お金はありませんが。
時間と。   元気で丈夫な体はあります。

今がどういう状況かもわかりません。
もしすでに。
人手を必要としていなければ。
それはそれで。   かえって良い事です。

サーフィンはしません。
島の方全てに笑顔が戻るまで。
その為に。   ほんの少しでも。   何かの役に立てれば。    と、そう思います。
そして。
それがまた。   直接ではなくても。
この旅で出会い。   優しくされ。    お世話になった皆さんへの。
そして。
時に激しく。   時に優しく。   時に静かに。   その存在を教えてくれた。    自然の恵に。
そして。
たくさんの大事な事を教えてくれた。    この旅に。

自分が出来る。   ほんの少しの。   恩返し。   だと。
そう信じて。

一期一会 一波一会 合掌

 

第百七十一話 “ どうか波がありませんように! ”  10-28

ジィジィジ~♪


ちょっとテントのジッパーを開けてみた。
ひんやりとした空気が流れ込む。
手を出して気温を確かめる。

寒いっ!!
日に日に朝の冷え込みが辛くなって来る。
しかし。
僅か0.数mmのシートで覆われているテントの中は。
温かい♪
風は通さないし。   自分の熱でテントの中の空気が温まる。
このまま。   テントの中でぬくぬくしていたいが。
そうもいかない。

泣く泣くテントを撤収し。   今日も走りだす。
冷たい北風が。
ゴールを急かすように背中を押す。
R389→R3→R270
長島町→阿久根市→薩摩川内市→いちき串木野市→日置市→南さつま市。
今日は走った。    久々に。    狂ったように。   走りに走った約100㌔。
これには一つ理由があった。

途中。   サーフポイントらしき場所をいくつも通り過ぎた。
北風の影響か。   どこも波がない。

江口浜に着き。

天草のAさんに教えて頂いたGANKOさんに到着♪
Nさんに非売品のステッカーをプレゼントしていただいた♪


ショップの前でライダーのKAZUさんや皆さんをパシャ♪



*短い時間でしたが皆さんありがとうございました!Nさん!ステッカーありがとうございました!

さて。
何をそんなに急いでいるかと言うと。
昨日の朝。   今日の朝自分がいた場所にKENGO君がいたらしい。
つまり。
朝の時点でここから50㌔圏内にはいるはずだ。
しかし気掛かりは。   この先に別れ道があると言う事だ。
R3とR270の別れ道。
果たしてKENGO君はどちらを選択し進むのか。
もし。
R3でそのまま鹿児島に向かってしまえば。    この旅ではもう会えない。
最後に会ったのは佐賀県だ。
また会えるだろうと思い。   普通に『じゃ!また♪』と言ったきりだ。

その後。   島旅に出た自分。
長崎に戻り。   旅を進めるも。  彼がどこにいるか見当が着かない。
そんな時に手にした情報だ。
近くにいるなら!と。

思えば。  恐ろしく長い付き合いだ(笑)
岩手県の手前。  宮城県で出会い。
それからは。  つかず離れず。  常に近くに存在を感じていた。
きつい道のりも。
彼が歩いて通った道だと思えば。  『負けるかぁ~(笑)』と力が蘇った。

他の旅人に出会えば。
彼に会ったか聞いたり、見かけたら声かけてあげてね♪と言ったりもした。
自分の後ろを歩いていれば。  道や野宿場所の情報を共有したりもした。

結局。
出会って以来。  常に身近に存在を感じていた。
本当に苦楽を共に旅した。  大切な友人だ。
そんな彼に。
最後に会いたい!と、思うのは当然だった。
今日は海が見える度に。
『どうか波がありませんように!』と祈った。
波があったら。  自分は究極の選択をしなくてはならなくなる。
しかし。
波は無かった。
例え波があっても。  今日の自分には見えなかったかもしれない。

夢中で走った。
結局。  分かれ道に着くまでに彼の後ろ姿を見つける事ができなかった。
ふぅ~。
と、ため息混じりの息を吐き。  R270を進んで行った。
どちらに進んだかはわからない。
けど。
きっと…。  そんな思いが更に自分の速度を上げさせた。
R270沿いのGANKOさんを。
足早に過ぎさってしまったのもそんな思いがあったからだ。

久々に足がパンパンになって来た。
ぐっと拳を握り。  言うことを聞かなくなりそうなその足を。  バンバン叩いた。
周りの景色すら見ていない。
視線の先は彼の姿を探してばかりだ。

息を切らし。  坂を登り。  下りに差し掛かった時だったと思う。
この両目が。  見慣れた後ろ姿を。
ついに捉えた。


いたぁぁぁ!!

ホッとしたような。  スキップしたくなるような。  学校の廊下で好きな子とすれ違う時のような。
そんな気分だった。
しかし。  冷静に。
いや。  冷静を装い。  普通に声をかけた(笑)
『あぁ~いたいた♪』と。
どうやら今日の目的地は一緒だったようだ。

寒空の下。
普段よりちょっと豪華な夕食を二人で囲み。

話す事はいつもながらの。  くだらない事ばかり(笑)
旅をしていて。  ホッとできる時間だ。

この後。
鹿児島港まで。  KENGO君のペースに合わせて進む事に決めた。
そうする事が。  一番いい♪  と、そう思ったからだ。

この半年間。
数え切れない選択をしてきた。
その結果が今日であり。  これから先の未来に繋がる。
だから。
自分が"そうしたい♪"と思った事に素直に従う事にした。

「それが一番いい♪」
旅をして。  身を持って知った事だ♪

ではまた!

 

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