第百七十一話 “ どうか波がありませんように! ”  10-28

ジィジィジ~♪


ちょっとテントのジッパーを開けてみた。
ひんやりとした空気が流れ込む。
手を出して気温を確かめる。

寒いっ!!
日に日に朝の冷え込みが辛くなって来る。
しかし。
僅か0.数mmのシートで覆われているテントの中は。
温かい♪
風は通さないし。   自分の熱でテントの中の空気が温まる。
このまま。   テントの中でぬくぬくしていたいが。
そうもいかない。

泣く泣くテントを撤収し。   今日も走りだす。
冷たい北風が。
ゴールを急かすように背中を押す。
R389→R3→R270
長島町→阿久根市→薩摩川内市→いちき串木野市→日置市→南さつま市。
今日は走った。    久々に。    狂ったように。   走りに走った約100㌔。
これには一つ理由があった。

途中。   サーフポイントらしき場所をいくつも通り過ぎた。
北風の影響か。   どこも波がない。

江口浜に着き。

天草のAさんに教えて頂いたGANKOさんに到着♪
Nさんに非売品のステッカーをプレゼントしていただいた♪


ショップの前でライダーのKAZUさんや皆さんをパシャ♪



*短い時間でしたが皆さんありがとうございました!Nさん!ステッカーありがとうございました!

さて。
何をそんなに急いでいるかと言うと。
昨日の朝。   今日の朝自分がいた場所にKENGO君がいたらしい。
つまり。
朝の時点でここから50㌔圏内にはいるはずだ。
しかし気掛かりは。   この先に別れ道があると言う事だ。
R3とR270の別れ道。
果たしてKENGO君はどちらを選択し進むのか。
もし。
R3でそのまま鹿児島に向かってしまえば。    この旅ではもう会えない。
最後に会ったのは佐賀県だ。
また会えるだろうと思い。   普通に『じゃ!また♪』と言ったきりだ。

その後。   島旅に出た自分。
長崎に戻り。   旅を進めるも。  彼がどこにいるか見当が着かない。
そんな時に手にした情報だ。
近くにいるなら!と。

思えば。  恐ろしく長い付き合いだ(笑)
岩手県の手前。  宮城県で出会い。
それからは。  つかず離れず。  常に近くに存在を感じていた。
きつい道のりも。
彼が歩いて通った道だと思えば。  『負けるかぁ~(笑)』と力が蘇った。

他の旅人に出会えば。
彼に会ったか聞いたり、見かけたら声かけてあげてね♪と言ったりもした。
自分の後ろを歩いていれば。  道や野宿場所の情報を共有したりもした。

結局。
出会って以来。  常に身近に存在を感じていた。
本当に苦楽を共に旅した。  大切な友人だ。
そんな彼に。
最後に会いたい!と、思うのは当然だった。
今日は海が見える度に。
『どうか波がありませんように!』と祈った。
波があったら。  自分は究極の選択をしなくてはならなくなる。
しかし。
波は無かった。
例え波があっても。  今日の自分には見えなかったかもしれない。

夢中で走った。
結局。  分かれ道に着くまでに彼の後ろ姿を見つける事ができなかった。
ふぅ~。
と、ため息混じりの息を吐き。  R270を進んで行った。
どちらに進んだかはわからない。
けど。
きっと…。  そんな思いが更に自分の速度を上げさせた。
R270沿いのGANKOさんを。
足早に過ぎさってしまったのもそんな思いがあったからだ。

久々に足がパンパンになって来た。
ぐっと拳を握り。  言うことを聞かなくなりそうなその足を。  バンバン叩いた。
周りの景色すら見ていない。
視線の先は彼の姿を探してばかりだ。

息を切らし。  坂を登り。  下りに差し掛かった時だったと思う。
この両目が。  見慣れた後ろ姿を。
ついに捉えた。


いたぁぁぁ!!

ホッとしたような。  スキップしたくなるような。  学校の廊下で好きな子とすれ違う時のような。
そんな気分だった。
しかし。  冷静に。
いや。  冷静を装い。  普通に声をかけた(笑)
『あぁ~いたいた♪』と。
どうやら今日の目的地は一緒だったようだ。

寒空の下。
普段よりちょっと豪華な夕食を二人で囲み。

話す事はいつもながらの。  くだらない事ばかり(笑)
旅をしていて。  ホッとできる時間だ。

この後。
鹿児島港まで。  KENGO君のペースに合わせて進む事に決めた。
そうする事が。  一番いい♪  と、そう思ったからだ。

この半年間。
数え切れない選択をしてきた。
その結果が今日であり。  これから先の未来に繋がる。
だから。
自分が"そうしたい♪"と思った事に素直に従う事にした。

「それが一番いい♪」
旅をして。  身を持って知った事だ♪

ではまた!