AM3:30。
けたたましく目覚ましのアラームが鳴る。
どうやら。 なかなか寝付けなかったが。 いつの間にか眠りについていたようだ。
海風荘のおばちゃんを起こさないように。 そっと静かに宿を出た。
まだ真っ暗な外は風が強かった。
名瀬港に向かう。
沖縄行きのチケットを購入し。
今度は自転車の手続きを済ます。
そうこうしている内に。
鹿児島から出発したフェリーが港に到着した。 |

この船に揺られて約300㌔離れた沖縄へ向かうのだ。
約12時間の船旅になる。
船から名瀬港行きの積み荷が下ろされ。 貨物の搬入が始まる。
しばらく待つ。
係の人からGOサインが出た。
自転車を押して船に乗り込む。
ひとまず寝床を確保し。 |

フェリー内をフラフラとしてみる。
出港3分前。
~間もなく出港致しますのでお見送りのお客様は~
そんなアナウンスが聞こえてきた。
その時電話が鳴った。
ダイスケ君だ。
『今港に着きました!!』 えっ?
一番上のデッキでウロウロしていた自分は。 慌てて港を見渡す。
見当たらない。
もしかして!と思い急いで搭乗口に向かう。
すると。 |

船員さんに早く出ないと出港しちゃいますよ!と急かされている人がいる。
ダイスケ君!
自分の姿を見た彼は。 『よかった~よかった~』と。
自分は『ありがとう!』とダイスケ君の肩を力いっぱい叩いた。
10秒にも満たない出港直前のギリギリの再会だった。 |

でも。 すごく心に残る10秒間だった。
普段の何気ない生活の中での10秒と。 この10秒は。 同じ10秒ではない。
一生忘れない10秒間だけの再会だった。
ダイスケ君が船から降りた直後に。 フェリーは港から出港した。
再び屋上のデッキに駆け上がる。
暗くて良く見えないが。 港にダイスケ君らしき姿が見えた。
離れて行く港。
ダイスケ君と奄美大島が見えなくなるまで手を振った。
数日前。
SANOさんが招いて下さった食事の席で。 ダイスケ君が。
自分はすごい人見知りで…。
ちょっと対人恐怖症だった時期もあったんです。
と話してくれた。
そんな人見知りの彼が。 困っている人の為に何かしたい!
と。
見ず知らずの人が大勢集まるボランティアに。
勇気を出して一人で参加していた。
そんな時に自分達は出会った。
ある時。
ダイスケ君が。 自分に夢を語ってくれた。
その夢は。 すごく彼らしい素敵な夢だった。
夢は誰かに話す事で。 向こうから一歩一歩近付いてくる。
と、自分はそう信じている。
自分は彼の夢を聞けた事で。
その夢が現実のものとなる日を待つ楽しみができた。
こんな話をどこかで聞いたことがある。
子供が素朴な疑問を学者に質問する。
そんな企画のラジオかテレビ番組での話だ。
ある子供が。
『流れ星に三回願いを言うと本当に叶うんですか?』
と、質問した。
天文学者はこう答えた。 『はい。叶います。』と。
そして続けてこう言った。
『いつ流れるかも分からない流れ星に3回も願いを言えるのなら、あなたはその願いをいつも強く心に思ったり、そのことを毎日考えていると言う事です。そう言う願いは必ず実現します。』
と。
旅人が流れ星だとしよう。
その旅人に自分の夢をしっかり話せるなら。 その夢は必ず。
必ず実現するだろう。
太陽も高く登り。 |

徳之島 沖永良部島 与論島 と。
沖縄はもうすぐそこだ。
しかし。
不思議な程落ち着いている自分がいる。 |

実は。 自分の中で。 旅とのお別れは既に済ませてあった。
鹿児島港を出港したその時にだ。
明日。
自分はこの旅の最終地点シーナサーフに到着する。
でもそこはゴールではない。
これから先の。
新しい未来への。
スタートラインだ。 |
晴れ渡る空の。 輝く太陽に。 手をかざしてみた。
そしたら。 手の平に。 その温かさを感じた。
"僕らはみんな生きている" そして生かされていると。
そう感じた。
ではまた! |
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