第百七十二話 “ 真夜中のトムソーヤ ” 10-29

今日は。
一日中。  ダラダラと。  のらりくらりと。
小春日和の長閑な道を。  ぽかぁ~ん♪と走っていたからだ(笑)

午後にはKENGO君の予定目的地に着き。

近くの温泉につかり。
これまたぽかぁ~ん♪と…
今度は。 温泉施設備え付けの。  リクライニングチェアに寝転がり。

よだれをだらぁーんと…。
世の中に戦争や紛争が起きているのが嘘のような。  そんな平和な一日。

夕方。  KENGO君と合流。


彼が温泉に行っている間に自分は洗濯をし。
旅人の強い味方。  夕暮れ時のA-COOPへ♪

2割引♪  3割引♪  半額!!
そんなシールが貼られた商品を血眼で探す(笑)
見つけしだいカゴに入れる。
どれを買うか決めるのはその後だ。
夕方のスーパーは。  ワンピークのポイントブレイクだ。
ローカルのおばちゃんがひしめくその中で。  ビジターの自分に与えられるものは少ない。
そんなにガッツかないでメローに行きたいが。  こちらも今日の夕食がかかっている。
極上のセットを待ってばかりもいられない。
何とか。  おこぼれに預かり。  明日の朝食まで手に入れた。

さて。  一つ問題が。
今日の寝床が決まっていない。
このまま。  A-COOPの閉店を待ってその軒下で♪
と言う緊急避難的な意見も飛び出したが。
実は。
しっかり?リサーチしてあった♪

『この先に公園があるみたいだから、そこに行ってみよう♪』
と、自信満々に発言をした。
『じゃぁ…』と、あまり気の乗らないKENGO君(笑)
そうして。  日が沈み。

地平線に僅かに夕方の名残を感じる午後6時。
その公園を目指して歩き出した。
暗くて自転車には乗れない自分は後ろを歩いて行く。

しばらく行くと。
○○公園入口とかかれた交差点に差し掛かる。
♪  『そこ!右だよ♪』と。
今日の寝床はすぐそこだ!  と、思っていた。
が。
街灯もまばらな道を。  いくら進めど公園が見当たらない。
だんだん焦ってきた自分は。  自転車にまたがり斥候役をかってでた。
『ちょ…ちょっと見てくる…』と。

先に坂を下る。
徐々に街灯もなくなり辺りは真っ暗だ。

その時。
うおぉぉぉん♪ と、いう音が暗闇に響き渡った。

近づいて行くと。
こんな真っ暗闇で草刈りをしている人がいる。
正直。  ちょっと不気味だ…。
何と無く。  その草刈りをしている人の視線を感じたので。
ペこりと。
軽く会釈して通り過ぎた。
しかしその先には。  道らしい道は無く。  獣道のような道しか無くなってしまった。
とてもこの先の道を進み。  例え公園があったとしても…  そこに寝る勇気がない(笑)

がっくり肩を落とし。  来た道を引き返す。
ふと。
周辺の観光案内看板に目がとまったので。  
何かいい情報はないかと。  看板を食い入るように見ていると。
突然。
背後で声がした。
『旅してるのか?』と。
びっくりして振り向くと。
暗がりに草刈り機を片手に持った人がそこに立っていた。

ビクン♪
なぜか高い壁をふらふらと歩いていて。  当然のように足を踏み外し。  壁から落下する。
そんな夢の時のようなビクン♪だった。
この状況は。
B級ホラー映画のワンシーンのようでもあった(笑)
が、話してみると。
怖い人ではなさそうだ。
言葉の端々から。
キャンプやアウトドアに関する深い知識が見え隠れしている。
自分達が寝床を探していると知ると。
『じゃあうちの庭で張れば?』と、そう言って下さったのが。
すぐ近くで。  『くろんぼ』という喫茶店をしているSさんだった♪
案内された庭に着いた瞬間。  自分ははしゃいだ♪
なぜかと言えば。
そこには。  子供の秘密基地さながらの場所があったからだ。

庭にある大きな"あこうの木"からはロープが下がり。
もうひとつの大きな木にはツリーハウスのようなものもあった。
周りには椰子やバナナ、パパイヤなどの南国の植物が生い茂っていた。
さらには。
小さなヨットやシーカヤックが。  その庭を囲むように置かれていた。

『本当にここにテント張っていいんですか!!』
と、聞いた時には。
『絶対この木の下に張るぅ!』と、既に心に決めていた。
『ちょっと暗いから明かりを着けよう♪』とSさん。
裸電球を木に吊り下げる♪
さらに。
ひょうたんを加工したランプを用意してくれた♪

まさか。
つい10分前まで。  こんなに素敵な場所でキャンプが出来るとは。

思ってもいなかった。

テントを張り終えしばらくすると。
Sさんが。
『ちょっとこっちへ来ないか?』と、喫茶店の中に案内してくれた。
遊び心が溢れ出したような。
そんな店内だった。
『はい!お冷や♪』と出てきたグラス。
鹿児島のお水は不思議な味がするようだ(笑)
なぜか水に酔った自分達。  夜遅くまでたくさん話しをした。

Sさんの遊び場は至る所にある。
シーカヤック&離島キャンプ。
フィッシングやウィンドサーフィン。
ヨットにマラソン、トライアスロンまで。
ダイビングはインストラクターで。  山にも登る。
利尻島のTOSHIYAさん見たいだ♪

でもこんな事を言っていた。
『僕はサーフィンと石鯛釣りだけは手を出さないよ(笑)』
と。
『やっている人を見ると、すごく楽しそうで(笑)
自分が手を出したら確実にはまってしまうからね♪』
と。
一つの事にこだわり続けるのでは無く。  自分の興味が赴くままに。  フィールドを選ばない。
その時一番条件が合っている"遊び"をする。
そんな方だった。

こうして。
お水しか飲んでいないにも関わらず。  二人でフラフラしながらテントに戻り。
転がり込むようにそれぞれのテントへ。
ふと。
さっきのSさんの顔を思い出した。

『だっていつまで遊んでいたいじゃない(笑)』
と、そう言っていた顔が。

昔、絵本で見たトムソーヤのようだった。

みんな。
大人になるに連れ。  子供の頃に持っていた"遊び心"を忘れてしまう。
いや。
本当は持っているのに。
でも・けど・だから。  と、なぜか自分でラインを引いている。
そしてそのラインに縛られて。  身動きが取れなくなる。
そして言う。
『そんなこと、俺も若い内にやりたかったなぁ~。』
と。
またそこに。  年齢と言うラインを自分で勝手に引いてしまうのだ。

年齢・性別・ハンディキャップ。
旅をしていて出会ったたくさんのトムソーヤ達は。
そんなラインを。  限界と言うラインを。  誰一人引いていなかった。

86歳のチャリダーYAMADAさんは。
『これは道楽じゃ(笑)』と、人生を楽しんでいたし。
ハンディキャップを持ったお遍路さんは。
『やって見なけりゃわからんだろう!』と言っていた。

みんな。
子供のように目を輝かせて笑っていた。
自分も。
いくつになっても。  そんな遊び心を忘れない。  そんな大人で在り続けたい。

そう思った。

ではまた!