~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十五話 “ ご注文はお決まりでしょうか♪ ” 10-24

パラパラ♪  ポツポツ♪
そんな音に目を覚ました。

久しぶりだ。  テントの中で雨の音を聞くのは。

フェリーターミナルの駐輪場に張らして頂いたテントを。

軒下に移動する。
雨の降りだしから僅か30秒の早技だ♪
そして。
何事もなかったようにすぐに眠りに着いた。

深夜? 早朝?  AM3:55起床。
最近早起きだが。
何もおじいさんになった訳ではない。  フェリーの出港がAM5:00なのだ。
今日も荷物を半ば強引に押し込み。
準備完了。

窓口でチケットを購入。

する前に。  一計を案ずる。
どの港に降りるべきか。

理由はこうである。
実は。
最初に立ち寄った島でお会いしたTさんが。  とても重要な事を教えて下さった。
『○○島にKYOさんという、この辺りの島のまとめ役がいるから訪ねて見たら?』と。
『すごく面倒見のいい人だから♪』ともおっしゃっていた。

そして。  翌日。
次の島へ渡る船を待っている時。
Tさんがターミナルに来て下さった。
『今日、明日。KYOさんの所で大会があるらしいよ♪』と。
島で行われるサーフィンコンテスト。
ぜひ見てみたい♪  何より、島のサーファーさんに会ってみたい♪
出来る事なら今日、その島に渡りたいが。  あいにくその島に行く船が無い…。
途中の島を経由して行かなくてはならない。

そして昨日。  この島に着き。  今から目的の島に向かおうとしているのだが…
しかし。
一つ大きな問題があった。
それは。
コンテスト会場も。  そもそも。  サーフポイント自体がわからないのだ。
それはTさんも同じだった。

でも。
その方が面白い。  探す楽しみがある♪  ここです!と地図にマークがしてあったら。
ただただそこに移動するだけの作業になってしまう。

そんなこんなで。
今、ターミナルのベンチで一計を案じている訳だ。
しかも、出港の時間は刻々と迫って来ている。

その島には二つの港がある。
正確には別々のしまだが。  北の港と南の港がある。
そのどちらに降りるかを迷っているのだ。
無い頭をひねった。
まず。
大会を開催するには波が必要だという事。
もとより波情報など存在しない。   風やうねりの向きを参考に。  島の西側か東側かを決める。

問題はその次だ。
北から探すか南から探すか。
縦に長いこの島だ。
しかも。
この辺りの、大小様々な島を見る限り。  島というより。  海に山がそびえている。
そんな感じだ。
そんな島の道は当然容赦ない峠の連続だ。
この選択を間違えれば。  タイムアップで終了♪も十分有り得る…

入り組んだ海岸線。  地図と真剣な睨み合いが続く。
しかし時間が迫る。
焦る…。

こんな時は。  頭を真っ白にして。  発券窓口に向かう。
選択肢は二つだ。
乗船券を買うその瞬間に決めよう。
と、そう決めた。

この方法はファミリーレストランなどに行った時にしばしば使う。
お腹が空いている時に。  あんなに美味しそうなメニューの写真がいっぱい並んでいたら。
当然。  迷う。
出来る事なら全部食べたいが。
その中から一つを選ばなくてはならないのだから。
二つ三つ位までは選択の幅を縮める事が出来るが。
最後の決断が出来ない…。

そんな時は。
ポチっ♪と呼び出しボタンを押す。
まだ決まっていないにも関わらず。
そして。
店員さんが近づいて来るのに焦燥感を感じながら。
『ご注文はお決まりでしょうか♪』
の問いの直後に頭に浮かんだメニューを頼むのだ。
きっとその時に頭に浮かんだご馳走が。  自分の一番食べたかったものなのだ。
と、思っている。
ので。  今回もそうする事にした。

『おはようございます!え~…っと。ここまで大人一人と自転車をお願いします♪』
こんな時。
毎回思うのだが。  結局最初から答えは出ていたのではないかと思う。

そうして。
降りしきる雨の中。

フェリーに乗り込んだのは今朝5時の事だった。

続く♪