金曜日の夜。 函館のライダーハウス:ウィロビーさんにふらふらしながら転がり込む。 オーナーのH・Tさんは、最初は寡黙な人かと思ったが。 サーフィンに対する情熱を静かに、しかし誰よりも熱く燃やしている人だった。 その日の夜。 登山好きのおじさん一人と。 波乗り好き二人。 いろいろ話した。 波乗りと登山。 一見話しが噛み合わないように思えるが。 自然に対する感謝の気持ちと畏敬の念。 そこには共通点がたくさんあり、フィールドは違えど同じ感覚を共有している事がわかった。 いや。 フィールドは同じだ。 地球と言う星の自然がフィールドなのだから。 三人の熱い話しは涼しいはずの北海道の夜さえ熱くした。 翌朝。 さぁ。 今日は自転車の修理をせねば。 街にある自転車屋さんを尋ね回る。 『すいません!直りますか?』 『…いやぁ部品がないね…』 『うちの店ではちょっと…』 と、立て続けに断られた。 断る自転車屋さんの表情を見ると。 少し焦り始めてきた。 あれ?もしかしたら、この故障はちょっと厄介な状況なのかも… 直らなかったらどうしよう…。 と、弱気になりながら次の自転車屋さんへ。 街の自転車屋さんは。 年々その数を減らしている。 大型の量販店やインターネットの影響だろう。 正直、どこのお店も活気がなく、主人の目には力がない。 次のお店にたどり着くと。 タイヤのパンク修理を待っているおばさんと、修理中のお店のご主人がいた。 お店の前に自転車を止めると自分にちらっと目をやった。 そして自分の姿を見て『ちょっと待ってて。』 と、今は修理に専念している。 おばさんの自転車のパンク修理が終わったかと思ったら。 そのまま、頼まれてもいないのにブレーキやチェーンを確認し、整備しだすおじさん。 その姿を見て。 あっ!このおじさんならなんとかしてくれるかも! と、その自転車に対する職人魂を強く感じ、それが期待に変わった。 おばさんの自転車の修理と整備が終わり、次は自分の番だ。 おじさんに自転車を見てもらう。 『リムかぁ…。』 自分はあまり知識がなかったのでホイールだと思っていたのだが。 壊れた箇所をリムと言うらしい。 『残念ながらうちには在庫がないなぁ。』 と、おじさん。 あぁ…やっぱりダメか…。 と、肩を落しかける自分。 すると。 『うちには(リムのストック)ないけど問屋に行けばあるかも知れないな。』 と、おじさんはまだ自分を見捨ててはいなかった。 そして、次の瞬間には軽トラに乗り込み。 ぶーん!と自分を残して走り去っていってしまった。 しばらく不安の中でおじさんを待っていると。 新しいリムを手に持ったおじさんが自分の前に登場した。 『安心しな!これで(沖縄まで)戻れるから!』 と。 おじさんは笑った。 しかし作業を進めて行くと。 ![]() 故障していたのはリムだけでなく。 スポークが一本と。 後輪のシャフトも折れていた事が発覚した。 次々に起こる難題に。 おじさんはあれこれと試行錯誤し。 決して諦めず。 職人としてのプライドを持って修理をしてくれた。 そして3時間後。 自転車は直った。 自転車屋さんとサーフショップは似ていると思った。 どちらも量販店やインターネットで手に入れられるが。 売るだけ。 買うだけ。 そこに情熱はない。 サーフショップや自転車屋さんには。 物のやり取りだけでなく。 人と人の。 心のやり取りがある。 そんな気がした。 *おじさん本当にありがとうございました! ![]() |