第百五話  Great Surf jorney Day-30 
“ 飛跳! ” 08-19

昨晩はライダーハウスで同室になったバイカーさんといろいろ情報交換。
あそこの景色がよかったとか、どこどこの何々が美味しかったとか。

そんな時。  電話が鳴った。
利尻島のTOSHIYAさんからだ♪

『どうだ!行き当たりバッチリか!?』てな具合で。
久しぶりに、と言っても2週間もたっていないが。
その声を聞いてめちゃめちゃテンションが上がった。

『どこまで進んだの?』  『釧路です!』
『うっそーマジで(笑)じゃあこれから○○や○○だね!Eにイチローってのがいるよ。最高にいい奴だから会って欲しいな~♪』と。
以前、利尻島のマルゼンさんで働いていたボディーボーダーさんらしい。
『ぜひ会いたいです!!』と言うと連絡を付けてくれる事になった。
その後もあれこれ話して電話を切った。

ちなみに。  礼文島で自分がチャレンジ?した波はやはりポイントではなかった…。

電話を終えると。  もう気持ちは完全に浮足立っている。
ワクワクしてしょうがない♪
そして。  ふと、気付いた。
ん…。  この感覚。  そういえば、利尻と礼文を離れてから。
KENGO君やT君と会った以外は。  ほぼひたすら走り通しだなぁ。
と。
自分の中ではそんなつもりではなかったのだが。  知らず知らずの内に気持ちが焦り。
心の余裕まで無くしていたのかもしれない。

ちょっと考えた。
『これは変更だな♪』と。  明日の目的地の事だ。

当初の予定では70数㌔先の浦幌のキャンプ場だった。
その予定は白紙撤回となり。  まぁ。  朝起きたら考えようと。
一先ず、何も決めずに寝る事にした。

朝起きて、身支度をしていると。  明日は長距離走行だぁ~。
と話していたバイカーさん達は早速出発。
『お互い、いい旅をしましょうね♪』と、これが自分の中の挨拶だ。

一人になった部屋で地図を広げてみる。  ぱっ!っと目に飛び込んで来たのは。



『釧路阿寒自転車道』の文字だった。  自転車自転車道!自転車専用道だ!
昨日は、この先の地図ばかり見ていたので全く気付いていなかった。
世の中に車自動車専用道は数有れど。  自転車自転車専用道となると滅多にない。

これだ!  しかもその先にはキャンプ場まである。  なんとも至れり尽くせりだ♪
行き当たりバッチリ!で行きますか!!  と、準備を整えて出発♪

今日も最高にいいお天気だ。
ライダーハウスを出て。  順調に自転車道まで着いたと言いたい所だったが…
久々の都会に迷いに迷い…
数㌔しか離れていない自転車道の入口に着くのに一時間以上かかってしまった。

実は意外と方向音痴なのだ(笑)

ともあれ。  自転車道に着いた。



車にびゅんびゅん抜かれる事も。  信号待ちもない。  原野をひたすら走る一本道だ。
当然。  鼻歌はもちろんの事。  しまいには結構本気で歌を唄いながら。
長閑さを満喫しながら道を行くのだ。



途中で。  『釧路湿原展望台』  と言う看板を見て。
よし!ちょっと言って見よう♪

一旦、自転車道を外れる。
今日はこの先のキャンプ場でのんびりすると決めていたので。  時間はまだまだたっぷりある。
だから寄り道もできる訳だ。
しかし。
ちょっと考えればわかりそうなものだが。  展望台と言うからには小高い場所にある。
小高い場所にあると言う事は。
登り坂がある。

うん。  考え無くてもわかる事だ。  が。  今日は緊張感0で。  のほほんとし過ぎていて。
そんな事にさえ気付かなかった。

しばらく走ると。  道は段々。  峠の様相を呈してきた。
あらら…。
と、やっとここで気付き苦笑い。

その時。  後ろからおばちゃんが自転車で迫ってきた。
道を譲る自分。
おばちゃんな方が圧倒的に早いのだ。
追い抜き際におばちゃんが。  『どこまで行くの?』と。  『展望台まで…』と自分。
『あらあら、そりゃ大変だ。』と、おばちゃん。
続けて『ちょっと冷たい水でも飲んで行きなさいな』と。
『はい!ありがとうございます!』と自分。

おばちゃんの家はすぐそこで農業をやっているようだった。  すぐにわんちゃんが迎えてくれた。
おばちゃんの家の庭にある水道から出てくる水は。  冷たくて甘くて美味しかった♪
そして、おばちゃんはトマトをもいで来てくれた。



これまたフルーツ見たいに美味しかった。
おばちゃんごちそうさまでした!
さらに。
甘えついでにハコブンダーを預かってもらい。  展望台まで行く事にした。
ハコブンダーはいざという時に簡単に切り離せるから便利だ。

ハコブンダーとしばしの別れ。  軽くなった自転車で一気に坂を駆け上がる。
到着♪
おおぅ。  ここか。
すでに展望台の上では幾人かが景色を眺めている。
すごくワクワクしながら展望台の施設内に入って見る。
いますぐダッシュで階段を駆け上がり、その展望台から景色を眺めて見たいが。
夏休みのちびっこ達の前でそんな無邪気な事は出来ない。

それが大人ってものだ。

焦る気持ちを抑えつつも。  若干、早歩きで展望台の一階に入ってみる。
すでに周りは見えていない。  獲物を捜す獣ねような目で階段を捜す。

ギラギラ。    あった!!  
えいっ♪  と、獲物に襲いかかろうとした自分をあるものが制した。

『この先有料』



えぇっ!!そ、そんな…そんなの聞いてない…。  しかも、お値段は400円だ。

た…高い。

こう言う場所で見る景色は。  プライスレス♪  ではないのか…。
しょんぼりと肩を落とし出口に向かう。
すると、展望台から降りてきた勝ち組の方々が満足げな表情で自分を追い抜いて行く。

そ、そんなにいいのか!  この見えない境界線の先にある世界は。
ここまで一生懸命坂を上がって来たじゃないか!
すぐそこにまだ見ぬ景色が待っているのに、お前は引き返すのか!?

と、心の中の誰かが言う。  でも…400円は高すぎる…。
場所によっては。  後100円出せばライダーハウスにだって泊まれちゃう金額だ。

結局三周ほど入口→出口をループし。  『大人ひとり。お願いします…』と。
お財布を握りしめていた。

自由の切符を手にした自分は。  もう。  成り振り構わず。
階段を三段飛ばしで4階の展望台へ一気に駆け上がる。

そして!  ついに!  その景色が!   全貌を現した!!

おお!





こっこれは…  何だか…。  この位の景色なら。
利尻岳の山頂や知床峠から見た景色の方が格段によかった…。
しかもどちらもプライスレスだ。

400円と言う大金を払って見た景色は。  至って普通だった。
がっくりと肩を落とし階段を一段一段降りて行く。
期待に胸を膨らませワクワクした表情で階段を上がってくるカップルさん。
自分ががっかりしているのがわかってしまったら。  せっかくのデートも台なしだ。
と、変な気を使いながら。  笑顔で『こんにちは♪』と言って見たりして…。

一階に降りてから。  ハッと気付いた。  さっき一階を3周もしている間に。
そこに飾ってある、サーフィンで言う所の。
THE DAY の時の写真や空撮で取った紹介画像等が意識下に刷り込まれていたようだった。

どうやらそれがいけなかったようだ。
沖縄に旅行に来た人が天候に恵まれず。  青い空♪白い砂浜♪クリアな海♪
の、パンフレットを恨めしく思うのと同じだ。

さて。  展望台を後にしハコブンダーを迎えに行き。  キャンプ場を目指して自転車道を走り出す。

午後にはキャンプ場に到着。  さすがにまだ誰もいないキャンプ場。
太陽はギラギラ照り付け。  風がそよそよ。  鳥が囀り虻が舞う。
テントを張り。
贅沢とわかっていながら。  携帯で音楽を流す。
もう。  最高の気分だ♪

思わず裸足になり芝生を全力疾走したり逆立ちしたり。



誰もいないキャンプ場で思いっ切り無邪気になって見た(笑)
本気で子供になって見た。  なんも考えずに。

大人と言う見えない制約の壁を突き破った。



なんだかものすごく。  清々しい気持ちになり。
大人だって子供だ。  思いっ切り遊ばなきゃだめだ。  と。  妙な悟りを開いてしまった。

さすがに疲れ。  テントに入り読者を楽しみ。



日が傾く頃に。



今日もまた。  タラコスパゲティーを2人前頂くのであった。



今日はそんな可笑しな一日だった。

ではまた!

 

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