第百話  Great Surf jorney Day-24 
“ 峠 ” 08-13

台風一過の澄み切った空はいつもより青さを増し輝いていた。

出会い・別れ・再会を幾度と無く繰り返して来た自分達は。  もう別れを悲しんだりはしない。
『きっとまた会えるさ~♪』と。  そう信じて疑わ無いからだ。

旅の途中で。  人生の途中で。  一瞬かもしれない。
でも、お互い共に旅をし。  これまでに共有した時間は。
掛け替えの無いものであり、この空のように輝いた時間だった。



それぞれの旅立ちだ。

北を目指す旅人と。



東を目指す旅人と。



…。   ちょ!?ちょっと待ったぁ!  逆!逆!

と、くだらない事もできる仲になった自分達は。
この先の旅路で再会出来ずとも、いずれまた顔を合わすだろう。

それでいい。

さて。  今日は斜里(しゃり)と言う街まで来た。  網走の隣の街だ。
つまりは対して移動していない。
この先の知床(しれとこ)羅臼(らうす)越えの前に一度自転車の整備やら、溜まった洗濯物を片付けたい。
なのでこの旅2回目のライダーハウスに早めに入りバタバタと色々片付けた。

ライダーハウスとは旅人の為の簡易宿泊施設である。
今日はここでいつもとは違った旅人と交流して見ようと思う訳だ。

自分の今後の夢の一つに旅人が集う宿を開きたいという思いがある。
自分が旅をしていなくてもその日常に旅を感じていたい。

色んな経験をし。  一つの価値観に捕われず。  そこで出会う旅人の道標のようになりたい。
そんな贅沢な夢だ。

以前。  ある人から言われた。  『この旅が終わるまでに次の目標を決めといた方がいいよ!』と。
自分の心の中では朧げに決まっていた。  が、まだ声に出しては言えない。
自分の夢を声に出して。  言葉にして語れるようになった時が。  夢が目標に変わる瞬間だ。

今。  その瞬間を待ち続けている。  まだ旅を折り返したばかりで。 些か気が早いかもしれない。
今はまだ夢。
でも一つの夢を実現している今。  夢は雲を掴む話しでは無いだ。
と、思えるようになっている。

夢は叶うものではなく。  叶えるもの。
どっかの壁にそんな文字が書かれた紙が貼ってあった。

その通りだ。  待っていても。  考えていても。  何も始まらない。

~だから歩いて行くんだよ♪
一日一歩♪三日で三歩♪  三歩進んで二歩下がる♪~

三日で一歩進めば十分だ。  最初の一歩さえ踏み出せば。
道は、その夢まで続いていく。
真っ直ぐでなくても。  平坦でなくても。  明日か明後日。


北海道沿岸ルート最難関。  羅臼峠を前にして。  不安はなく。
なぜか。  険しいであろうその道のりに。  ワクワクしている自分がいる。
だって。
それを越えればまた一歩。  目指すものが近づくのだから。



では!

 

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