~ちゃりんこ日本一周サーフィンの旅 番外編 ~歩旅最果島紀行~
第百九十七話  “ 伊良湖からの手紙 ”  11-28

話を少し遡る事になるが。

沖縄本島のシーナサーフにゴールし。
その夜、先島諸島行き手書きチケットをBOSSから頂いた。

*自転車日本一周波乗り旅日記202日目参照

その数日後だった。
やなっちへと書かれた一見怪しげな手紙がシーナサーフに届いた。
恐る恐る開封してみると。
差出人は。
BALI HIGHのYさんからだった。

『~伊良湖の兄として日本最南端の波照間島行きのチケットをプレゼントします。沖縄の弟 やなっちへ~』
と、その手紙には書かれていた。

そして石垣島⇔波照間島と書かれたチケットが同封されていた。
しかも矢印は往復で♪

昨日は沖縄知事選の前日と言うこともあり。
730交差点では最後の演説に地元の支持者が大きな声援を送っていた。

その様子を遠くから見ていた若い観光客さんが。
『なに?テロ?』と言っていたのを聞き。
足の痛みも吹き飛んだ。

それを言うなら。
百歩譲っても。
デモじゃないだろうかと…

まぁそれはいい。

この時期の波照間航路は揺れる所かしょっちゅう欠航するらしい。
この旅の目的を絞った自分には落ち着かない状況だった。

波照間と与那国島に行けるだろうかと。

欠航で滞在が伸びれば伸びるほど。
野宿の出来ないこの旅は。
金銭的体力を奪っていくのだ。

あてにならない天気予報を食い入るように見てみると。
日曜日、月曜日と何とか行けそうな海況だ。

そうとなれば迷う事は無かった。
明日、波照間島に行こう!
と。

そして今日。
朝1番の波照間島行きの船に飛び乗った。
乗客はたったの5人。

そして海は驚くほど穏やかだった。
 
果てのうるま(珊瑚礁)
はてうるま
はてるま(波照間)

と、なったらしい。

そんな日本最南端の島に降り立った。
足の負担を減らすためにサーフボードは石垣の宿に置いてこようかとも思ったが。
自転車とハコブンダー無き今。
一緒に日本中を旅した相棒はサーフボードだけだ。

そんな友人を置いてきぼりにはできなかった。

島に着くと慣れるまで方向感覚を失うが。
この島に関しては簡単だった。

南へ。
目指すは最南端だ。
地図を見る限り目測で片道約6㌔といった所だ。

コンパスの針がSの方向にゆっくりと歩き始めた。
波照間の風と時の流れは今の自分にぴったりとシンクロしていた。

島の道路は普通車よりトラクターがメインのようだ。
時折、小気味よく聞こえてくるトラクターのエンジン音もまた今の自分には調度良いテンポのメトロノームのようだった。

島の真ん中に立つ灯台を過ぎると海が見えて来た。
観光で来ている方がレンタルサイクルで気持ち良さそうに。
さとうきび畑を真っ直ぐに伸びる道を。
風を受けながら気持ち良さそうに下って行くのを。
どこか懐かしい思いを感じながら眺めていた。

出発前に携帯に仕込んでおいた琉球民謡をそのまま流し。
島の風に乗せて見た。

自分の心はとろけそうになった。
心が。
信じられないくらいリラックスしていくのが手に取るように感じられた。
足はそれなりに痛いのだが。
それさえ忘れてしまう程の時間が自分の中に流れていた。


灯台から下った道を右に曲がった。
そこから坂を上がると。
星観測所が見えて来た。
波照間島と言えば南十字星サザンクロスが見える事で有名だ。
が、今は時期ではないらしい。

視界が開けその先を見渡すと。
遠くに大きな碑がたっているのが見えてきた。
あっ!
最南端はもうすぐそこだ。

実はもともとそんなには日本の東西南北にはこだわっていなかった。
最北端は稚内の宗谷岬だった。
最東端は根室の納沙布岬。

今思えば当初はショートカットして根室には寄らないつもりだった。
が。
たまたま沖縄で知り合った知人から。
納沙布岬のライダーハウスで働いてると連絡があり。
急遽行くことにしたのだった。

あの時あのタイミングで連絡があった事。
そもそも沖縄で彼に出会えていた事に感謝だ。

色んな事を考えながら最南端の碑に続く白い道を進んで行った。

そよ風に乗った琉球民謡のテンポに合わせて。

自分でも驚いた。
最南端の碑までたどり着いた時。
喜びと。
それを上回る達成感がそこにあったからだ。
 
ここまで来たんだ。
自分の足で。

生まれ育った日本という国の南の果ての果てに。

大きく息を吸い。
両手を広げ。
全身で季節外れの南風を体に受けた。

空さえ飛べそうな気がした。
このスカイブルーの空を飛び。
旅で出会った人達に。
今のこの気持ちを伝えに行きたい。
と、そう思った。

以前。
TAKAさんが波照間島に立ち寄った際に利用した民宿を訪ねた。

たましろ荘。

さすがにこの時期だ。
今日の宿泊者は自分一人だった。

宿のおじちゃんが。
『なんだか今日は特別サービスになっちゃったなぁ(笑)』
と。
素泊まりの自分に。
豪華すぎる夕食を用意してくださった。

ボリューム満点の食事はお腹を満たし。
最南端のこの島は自分の心を満たしてくれた。

島で星空を見ることは出来なかったが。
星空よりキラキラした思い出がまた一つ。
この旅の記憶として心にしまわれていった。

ではまた!

*BALI HIGH Yさん! 素敵なプレゼントありがとうございました!
そしてお子さん誕生おめでとうございます!

 

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