第二十七話 “ スローダウン ” 05-24

昨晩は結局寝場所を見つけられず…
市内をさ迷う。

今回の旅始まって依頼の笑える場所で野宿と言うよりは仮眠。         洗車場(笑)
こんな天気の真夜中に車を洗う人はいないわけだ。

猛烈な風と雨。
台風かっ!
とツッコミたくなる。

夜が明ける。
いよいよ激しさを増す。
風が唸り。
雨が痛い。
タイミングを見計らい、またまた市内をさ迷う。
もうダメだ。
まっすぐ走れない。
前見えない。
わけわからない。   助けてぇぇェェ…

子供の頃。
台風が来るっていうと。
なぜか。
ワクワクした。
公園への階段が滝のようになってたり。
ぬかるんだ畑に足を踏み入れずっぽり膝まではまってみたり。
あの頃はそういうフィールドが冒険家になった気分のようで好きだった。
だからワクワクした。

だが。
今日は違う。
子供の頃のようにはしゃぐ気にはならず。
超低速でふらふら走っていると。
風で煽られ。
曲がりたくもない道を曲がってしまった。

が。
その先には。
日帰り温泉温泉
ありがとう。     ありがとう。

憎たらしい風よ。
お陰で緊急避難完了。
ずぶ濡れカッパが一匹。
店員さん目が点。
気まずい雰囲気のままオープン直後のお店に入る。
なんとかこの雨が落ち着くまで粘ろう。
一向にやまない雨風。
更に勢いを増す。  増す。  増す。

露天風呂もチョッピーながら親指の爪~セットくるぶし位にまでサイズアップしてきた。

ムムムっ!
もしや!
ロッ!ロングなら何といけるかも!!

いやいや。   まてまて。
ここは公共の場だ。
人様に迷惑をかけてはいけない。
と、そう言う問題ではない。
しかしもう、こうなって来ると。
自然災害警戒レベルだ。
テレビの緊急速報では警報発令の字幕スーパーが踊ってる。
何とか時間を稼ぐ為にカラスが長湯する。

くらくら。   ふらふら。   水風呂ダイブ。   シャキーん!

リピート。  リピート。   リピート…

あぁ……何だか疲れた。
さすがに長居も限界だと感じ、コインランドリーに身を寄せる。

洗濯♪    洗濯♪
乾きたてのホカホカな服を着る。
何気にささやかな幸せの瞬間だ。

午後。
雨も少し弱まって来た。
風は相変わらず強いので、ゆっくりと市内を走っていると。
ぱぁーん!
と乾いた音が街中に響き渡った。

何だ!  何だ!  何だ!    銃声か!?

その途端、自転車がガタガタガタガタと揺れだした。
やられた?
もしや…
撃たれたのか?

ん?
でも何ともないぞ?
ぁ   あっ…    パンクだ…
しかも自分のリアカー…



そうなのだ。
今朝タイヤチェックをした時。
すり減ったタイヤを見て、
これはやばい!!
と思って交換しようと、自転車屋さんを探している最中だった。

ここまで沖縄から走行1300km



良く頑張ってくれた。

しかし。
これがどこかの山の上でなくて本当によかった。
と思いながら。
のろのろと街中をカッパ姿で自転車とリアカーを引いて歩く。

一人のご老人に道を尋ねる。
とても親切に教えてくれた。
道がわかれば進むのみ。
意気揚々と歩いていく。

信号待ちで。
ふと、気配を感じ後ろを振り向くと。
さっきのご老人が後から追いかけて来ていた。
『ちょっと。そっちじゃないですよ。』と。
自分が間違った道を曲がった事に気付き300メートルくらい追いかけて来てくれていたのだ。
なんて紳士な方なんだ。

感激し。
深くお礼を言うと。
『私も近くに用事があるから途中まで一緒に行きましょう。』と。
分かれ道まで案内してくれた。
しかも。
しっかりと自分が道を曲がるまで間違えないようにと。
立止まり見守ってくれているではないか。

振り返り。
深々と頭をさげた。

ご老人と歩いていたのは10分くらいだっただろうか。



ペースを合わせゆっくりと。
この街中でご老人と自分の時間だけの流れが違って感じられた。

ふと思う。
今日は少しゆっくりしようと。

さて。
そんな訳で今日は宿をとりました。
今日はゆっくり寝て。
また明日から元気に進むとします。

ではまた!