第四十一話 “ 信じる勇気 ” 06-07

福ちゃんさん。
ひなちゃんさん。

とてもいい出会いだった。
自分達しかいないキャンプ場。
ビールをご馳走になり、たくさん話した。



福ちゃんさんは話しを引き出すのがうまい。
だから昨日の自分は何だかおしゃべりで、色んな事を話してしまった。
ひなちゃんさんは明るく装いながらも、この先に不安をかかえているように見えた。
生意気かとも思ったが自分の考え方を素直に話した。

二人とも。
旅人でありサーファーだった。
なにより自然が大好きな人達だった。
知床半島7日間カヤックの旅の話しは聞いていてワクワクした。
自分もこのキャンプ場に迷い込み。
二人も当初の目的地とは大幅に違う場所。
そう。
このキャンプ場にたどり着いた。
引かれあったとしか思えない。

朝起きる。
二人はまだ寝ているようだ。
お湯を沸かしコーヒーを飲む。



雲の切れ間から朝日が見え隠れしている。
鳥の声と海からの風。
とても素敵な時間。

二人も起きてきた。
また話した。

福ちゃんさん。
昔の事を話してくれた。
400$を握りしめアメリカへ渡った話し。
息子さんが小さい時、突然旅に連れて行った話し。
旅をしてきた人達は言う。
俺も昔、色んな人に親切にされお世話になった。

今となってはその人達に恩返しするのは難しい。
だから。
だからなのだ。
『これあると絶対役に立つから!』と。
福ちゃんさんからヘッドライト・新品ガスボンベ・食料を頂いてしまった。



今は感謝しかできない。

でも。
結局これも繋がっている訳だ。
誰かが誰かにした善意が巡り巡って自分に回ってくる。
そのサイクルを決して自分が止める訳には行かない。
朧げながら次の道が見えた気がする。



別れの時は来る。
どんな時も。
でもそれは。
その時の寂しい気持ちは。
次に再会出来た時の喜びに繋がる。

その時を信じて。



さて。
二人と別れた後。
再び御前崎に向かう。

昨日とは違うポイントへ入る。
いつもの様に『いただきます!』



先に海にいる人達に挨拶する。
『おはようございます!おじゃましま~す!』と。
『おはよう!あれ?前に吉田で一緒だったっけ?』
『いや!吉田は行ったことないです(笑)』と。
きっと似ている人がいたんだろう。

気持ちいい挨拶を返してくれる人は。
見ていて必ず気持ちのいいサーフィンをする。
パドルが追いつかず、波に乗れなかったとしてもニコニコしている。
自分はなるべくそういう人の近くにポジションをとる。

波の取り合いにイライラしたり、何に対してかはわからないが、ムスっとした顔をしている人には近づかない。
こちらの気分が台なしになってしまうから。

さて問題はここからだった。

『ごちそうさまでした!』と一礼し、海から上がり出発。
天気も良く最高の気分。
鼻歌まじりにのんきに走る。
こういう時は決まってJackJonson の曲が頭を流れる。
途中いくつかポイントを見ながら静波に到着。
字の如く今日の静波は静かな波。



ローカルさんから話しを聞くと『明日明後日ては風が入ってきびしいね~』と。
どうしよう。
ここで。
これからどうするかで迷いが生じた。

動くか。
動かないか。
この選択の結果でこの先に起こる出来事が大きく変わってくる。
それはここまでの旅を通じて肌で感じて来た事だ。
だから余計に悩む。
2時間位悩んだ。

自由。
すべてが自分で選択できる。

選択。   そう。
全て自分で選択しなくてはいけない。
その結果がどうなるかわからない。

でも。 でもだ。
自分で決めて進む道。
きっと間違いはない。

右か左か。
それによって大きく未来が変わる。
だからこそ自分を信じるしかない。
自分を信じ選択した道。
それが間違えでもいい。

いや。
間違いなんてないのかも知れない。
いけないのは、自分の気持ちに嘘をつく事。

決めた。  進もう。
思いっきり自分を信じて。

走り出してすぐに。
すれ違う車から。
『お~い!頑張れ~!』と声をかけられた。
浜松ナンバーの紺のハイエースだったと思う。
運転席の方もニコニコしてくれてた。

嬉しかった。
さらにしばらく走ると。
黒い車の、いかにも。
いかにも旅好きです!って風貌の人がクラクションと共にガッツポーズをしてくれた。
思わず笑顔になった。

そして気付いた。
選ばなかった道での出会いを悔やむのではなく。
選んだ道の出会いを喜ぼうと。

これから先。
色んな選択。
決断を迫られるだろう。
そんな時は。
勇気を出して。
自分を信じて。
思いっきり突き進もう。



そう心に決めた。

ではまた!