第五十二話 “ 修行僧 ” 06-22

静かな山の朝。

昨晩は熟睡してしまった。
自然が生み出す音のみの世界。
これは贅沢だ。

KOOOさんが朝ごはんを作ってくれた。



窓から山々を眺めながら頂く朝食。
贅沢だ。

さて、KOOOさんと鴨川へ向かう。
KOOOさんが通っているショップに顔を出す。
NONKEY SURFさん。

ハルさんと一緒に!



優しさが顔に滲み出ている方だった。



『うちのステッカーも貼ってよ!』と
ステッカーを頂く♪





さらに琵琶を頂く。
KOOOさんと一緒に『いただきます! 』
『うまいっ!』と、二人で目を合わせ、なぜだか笑った。

KOOOさん。  実はサーフィンは始めたばかりだ。
でも長年の夢だったと言う。
今日で始めて数回目。
自分が波乗りを始めたばかりの頃をふと思い出す。
理屈抜き。
波に乗れても。
乗れなくても。
最高に楽しかった。
過去形で表現したがそれは今でも変わらない。
常に新鮮な気持ち。
これが波乗りの不思議な魅力だ。

KOOOさんが海に入って行く姿。

がむしゃらにパドルする姿。
あぁ。完全にはまってるな♪
と、ニタニタしてしまった。





*KOOOさんお世話になりました!ありがとうございます!
*ハルさん!ありがとうございました!KOOOさんをよろしくお願いします!

さて自分は。  今日か明日の予定で。
かねてからFUKUちゃんさんに紹介してもらっていた、Jyunさんに会うために移動を開始。

途中。
昨晩お世話になった【うおまさ】さんに立ち寄る。



女将さんが明日立ち寄るようにと言って下さっていたからだ。
【うおまさ】さんの謎。
しばらく走り【うおまさ】さんに到着。
なんとも心苦しい事に到着したのがお昼時。
タイミングの悪い時間だ。
でも。
せっかく声をかけて頂いたので勇気を出して店内へ。
残念ながら女将さんにはお会いできなかった。

が。
『女将から聞いてます!ちょっと待ってくださいね』と。
しばらくすると特大のおにぎりを持って来て下さった。



このお店。
実は著名なプロサーファーさんのご実家だった。
おそらく地元の方は皆さんご存知なのだろうが、自分はびっくりだった。
忙し時間のためゆっくり話しをしたりはできなかった。
【うおまさ】さん!ご厚意に感謝します!
ありがとうございました!

さてJyunさんに会うために再出発。
自分の場合。
約束が出来ない。
いついつに行きます。
と正確な事が言えないのだ。
遠く離れた場所でも、意外と早く着く事もあったり。
予想外の峠道に全然距離が進まなかったり。

なにより。  いつ何時。  どんな出会いがあり。  どんな展開になるのか。
自分でも全くわからない。
だから約束が出来ないわけだ。

天気も回復した。
地図とにらめっこ。
なんとか今日たどり着けそうだ。

途中でJyunさんに連絡をする。
と。
明日は予定があり、夕方まで留守にすると。

どうしよう…  じゃあ。
一日この辺りで時間を潰そう。
で、明日会いに行こう。
と、決めた。
これもすべてタイミングだ。
どうやら今日は間の悪い日らしい。
微妙にタイミングがズレている。

明日お会いするために今日の寝床を探していると。
Jyunさんがわざわざ自分を探しに来てくださり、『わかりにくい場所だから』と、地図を手渡して下さった。
さらに。
『用事はキャンセルしちゃった♪』と。
自分のタイミングに合わせて下さったのだ。

こうして夕方。
Jyunさんのお宅に行く事が出来た。



自分がFUKUちゃんさんからJyunさんの話しを聞いたのは御前崎で始めてあった日の夜だった。
『千葉にさ~七年間ヨットで世界中を旅した人がいるんだよ~。ぜひ会ってもらいたいなぁ。』と。
ヨット!?
世界中の海!?
七年間!?
その話しを聞いた時。
絶対会いたい!   と、思った。

どんな人なのか。  旅の話し。  今の暮らし。
少し考えただけで、興味が尽きなかった。
この人には絶対会う。
会わなくてはいけない。
そう感じた。
実際にお会いすると、想像とは全く違う方だった。
想像以上にナチュラルで柔らかく温かい人だった。
しかも後で年齢を聞いてびっくりした。
元気過ぎる(笑)

さてさて。  到着後。
ひょんなことから近くの【妙厳寺】に向かった。
葛飾北斎の富岳三十六景
相模沖
多分かなりの方が目にした事のある有名な浮世絵?だ。
大きな波間に舟と富士山が描かれているあれだ。
Quicksilverさんのマークのもとになっているやつだ。

その波模様のモデルになった彫刻がその妙厳寺にあると言う。
伊八さんと言う方の彫刻だそうだ。
早速見に連れて行って頂いた。

お寺に着くと。
住職さんが出て来た。
Jyunさんとはとっても中が良いようだ。

早速その彫刻を見せて頂く。



確かに。  凄い。
素人目にもわかる迫力と躍動感。

しばらく見入っていると。
『こちらへ。』と住職さんにご本堂に案内された。
自分の旅の安全を祈願して下さると言う。
静かな空気と時間が流れるこの場所。
目を閉じ手を合わせる。
やけに似合うこの姿(笑)



ご住職が読み上げてくださるお経が本堂内で反響をし不思議な感覚になった。

途中。  お焼香をし、お経が終了。
すると。
ご住職さんがご本尊さまの所にあったお守りを手渡して下さった。

有り難く頂戴した。
何だかすごく心強い。
いつも考えている。
この旅で出会い。  触れた優しさ。  親切。  真心。

それに対する恩返しは。
旅を無事に完結すること。
その為の心強いお守りを頂く事が出来た。

Jyunさん宅に戻る。
奥様のBeiさん(←ニックネーム)もまた、自然体で柔らかい雰囲気の方だ。
驚いたのだが、約七年に渡るヨットでの旅。
ご夫婦一緒での旅だったのだ。
Jyunさん照れもせず、さらさらと。
『私達は二人で一つ。だから出来た船旅だし、二人一緒だったから最高に楽しかった』と。



お互いが助けあ合い尊重しあっている関係。
それを目の当たりにした。
ここの家にはワンちゃん3匹猫さん2匹が一緒に暮らしている。
みんな近くに捨てられてしまっていた子達だそうだ。
ここのみんなはいいご夫婦に拾われ幸せだ。
彼らの優しい目、大人しい様子を見れば一目瞭然だ。
夕飯をご馳走になった。

天然鰻のうな丼やすべて自家製のお野菜。



お腹がびっくりしやしないかと思うくらい美味しかった!
たくさん話しも聞けた。
ワクワクする話しばかり。
よくよく考えたら命の危険さえあるような状況での話しをさらっと笑い話し見たく話す。
かと思えば、旅でみた景色の話しを臨場感たっぷりで話してくださる。

グリーンフラッシュ。

聞いた事はあるだろうか。
そうそう見れる現象ではない。
太陽が水平線に沈むその瞬間。
緑の光がボワっと見える現象だ。
グリーンフラッシュを見たと言う方に始めてお会いした。
マスカットのようなグリーンだった。
と言っていた。
自分もいつか見てみたい。

Jyunさんは言う。
『とにかく楽しみなさい。』と。
とてもシンプルだが経験を積み重ねた方が言うと重みがある。
『みんなから頂く親切や優しさへの恩は、出会ったその時にすでにお返ししているんだよ。』と。
お二人がヨットで旅した時。
今の自分と同じように、たくさんの方に出会ったとJyunさんは言う。
出会う度に出会った方の夢がヨットに載ってくる。
そしていつしか、そのたくさん背負った夢が重たくなる。
と。
たくさんの方に出会い親切にされ応援される。
するとそれが。
旅を絶対に成功させなくては!と言う気負いやプレッシャーに変わってしまう。
すると焦りや変な義務感が出て来て、ミスや事故に繋がる事になる。
そしたら結局ゴール出来ずに夢を運ぶ事が出来なくなる。
ゴールという名の恩返しも。

それを自分に伝える為の言葉だったような気がする。
完全に見透かされている。
確かに今の自分には若干の焦りがある。
今は流れに身を任せてはいるが、このままでは間に合わないのでは。
と言う焦りだ。
それを見透かされている。
焦って楽しむ事を忘れてはいけないって事を。

すべての出会いには意味がある。
だから。
ここでJyunさんに出会い頂いた言葉。
この言葉は決して忘れてはならない。
焦りが出た時は。
今日の事を。
必ず思い出すように。
しようと思った。

ではまた!