~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六十六話 “ 島の宝 ” 10-25

朝5時に出港した船が目的の港に着いたのは7時を過ぎた頃だった。

雨はいよいよ本降りだ。  寒い…。
でも。
寒さにめげるより。  大会会場は見つかるだろうか?
KYOさんという方や島のサーファーさんはどんな人なんだろうか?
波は?  など。  いろんな事が頭を過ぎる。

小さな島から大きな島へ移動する。
そこからさらに。  島の反対側まで一山越えて行く。
どうやら。  登り切ったようだ。

今度は急な下り坂と急カーブ。
こんな雨の日は慎重に慎重に坂を下って行く。

しばらく行くと。
島の反対側の海が見えてきた。
それだけではなかった。
入り江のような場所に。  ラインが見えた。

うねりだ♪
どうやらここが。  きっと大会をするならここに違いない!と。  目星を付けたビーチのようだ。

一気に坂を下る。
ビーチに着いた。
その次の瞬間。  ここだぁ♪  と、確信した。

駐車場に置かれたサーフボードと。


ジャッチ席のような場所。

しかし。
まだ早いのか。  サーファーさんの姿がどこにもない。
軒下で雨宿りしながら。  様子を伺っていた。
すると。
一目でサーファーさんとわかる人がこちらに歩いてくる。
『おはようございます!~かくかくしかじか~で。』と言うと。
『KYOさんならこっちにいるよ!』と、海を見渡すロッジに案内して下さった。


ロッジのドアーが開かれる。
そしてそこに現れた方がKYOさんだった。
挨拶をし。  経緯を説明すると。  KYOさんはニコッ♪と笑ってこう言った。
『繋がったね~♪』と。
この一言でKYOさんがわかった気がした。
そして『さぁ上がって上がって♪』と、おっしゃって下さったが。
何しろ自分はずぶ濡れだ。  中に入るのはちょっと申し訳ない。
大会は10時頃からだと言う事なので。
それまで待って。  見学させて貰う事にした♪

外で雨宿りをしながら海を眺めていると。
波をクリーンにしてくれているオフショアが寒い…。
ガタガタ震えていると。  それを見兼ねたサーファーさんが。
『遠慮しないでこっち(ロッジ)来なよ♪シャワーもあるしさ♪』と。

寒さに震えていた自分は。  シャワーの誘惑に負け。
迷惑をかえりみず。  ロッジにおじゃました。

そこにいらしたサーファーさん達に挨拶をした。
すると。
『今日ここに来たのも何かの縁だね♪』と。
この大会は。  ずっと延期になっていたらしい。
そして。
ようやく開催の日を迎えたこの日に。  ふらふらやって来た自分。  
一年365日ある中で。  今日と言う日にここにたどり着いた事に。  感謝だ。

徐々に集まり出したサーファーさん。


だんだん賑やかになって来た。
大会本部席をロッジに移し。
後は潮が引くのを待つばかり。
朝一は上げいっぱいでうねりがそのままショアブレイクになっていたが。
徐々に引き出しブレイクし始めた。

そして。


赤いフラッグが緑に変わった。


プァ~ァ~ァン♪  と。
第2回 SWANKY DROP SURF CONTESTが開催した。

この島のサーファーさんはもちろん。
隣の島のサーファーさんや近隣の県からの参加している方もいらした。

今までサーフィンの大会をキチンと見た事がなかった自分。
こんなにも楽しいものだとは思わなかった。
ここには。
笑顔がたくさんあった。
今日と言う日を目一杯楽しんでいるサーファーの姿がたくさんあった。
夢中で大会を見ていた。

すると。
会場のマイクを通して。
『やなっちさん♪やなっちさん♪うどんが出来たので食べてください♪』とKYOさん。

この島のうどんだ。


美味しい♪  思わずおかわりしてしまった(笑)

ビギナー ・オープンと大会は順調に進んで行った。


途中、晴れ間も出で大会を歓迎してくれているようだ。


午後。  大会は無事に終わった。

『待ちくたびれたでしょ(笑)』とサーファーさんが声をかけて下さった。
『楽しんで行ってね♪』とは海へのGOサインだった。
『おじゃまします!』

岸から見ていたのとはだいぶ印象が違う波だった。
でも。  すぐにコツを掴めた♪
これも。
今までたくさんのポイントで波乗りをさせて頂いたおかげだ。

とにかく楽しかった。  夢中になって波乗りをした。
大会の片付けも終わった頃。  皆さんも続々と海に入って来られた。

ジャッチをされていた、この島人として。
初めて宮崎で波乗りをしたという島のLegendさんもパドルアウトして来た。
『おじゃましてます♪』と言うと。
ニコッ♪として。  『"いい波"乗ってるね!』
と、自分に声をかけて下さった。

なぜだか。  その言葉が。  ものすごく嬉しかった。
それは自分が形のいい波や大きなセットに乗ったからでも。
上手に波に乗ったからでもなく。
自分が波に乗り楽しんでいる姿を見て。
そう言って下さったんだと。

その言葉をそう理解したからだ。

大会の途中でオフからオンに変わった風も落ち着き。
潮の上げと共に刻々と表情を変えて行く波。
いつしか。
ローカルさんも。
『いい波だね♪ここ最近では珍しい波だよ♪』と顔から笑みをこぼしていた。

海から上がり。
KYOさんの姿を探した。
ちょうど海に入ろうとしている時だった。
『大会お疲れ様でした!』と声をかけた。
すると。
ホッとしたような表情をしたKYOさん。
ずっと順延していた大会を開催できた安堵の表情だった。

KYOさんはこの島の出身ではない。
大阪に生まれ巡り巡ってこの島にやって来た。
そしてこの島の波に出会い、今こうしてここにいる。

こんな事を言っていた。
『この島の素晴らしさをもっともっと島の若い子達にわかって欲しいんだ』と。

サーフィンを通じて、その素晴らしさを知った若いサーファーさん達。
綺麗な海と自然が与えてくれるこの波を。
これからもずっと。  次の世代。  またその次の世代へと。  引き継いで行くのだろう。

この島の。  宝として。

*KYOさん始めたくさんの皆さん。
今日と言う日にご一緒出来て本当に嬉しかったです。
皆さんの暖かさを忘れません。

本当にありがとうございました!