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第九十一話  Great Surf jorney Day-10 
“ THE◎DAY & 行き当たりバッチリ ” 07-31

ついに。  ついに。  たどり着いた。  この三ヶ月間。
一日たりとも頭から離れる事が無かったこの島。

利尻島。
今日という日をどれだけ待ち望んだ事か。



フェリーから降りいつものように辺りをさ迷う。
フェリーから降りると方向感覚が無くなっていて毎回ウロウロする。

まずは行く所がある。
利尻島のローカルサーファーさんに挨拶無しでは勝手に他人の家に上がり込むのと一緒だ。
向かう先はマルゼンさん。

数年前。  始めてRISHIRI WAVEを見た時は驚いた。
インターネットの画面に釘付けになりながら、『で…利尻島ってどこ?』と…。
そしてまた驚いた。
えっ!?こんな所で…
と。
その衝撃以来、利尻島へ行く事は漠然としたごちゃまぜの夢の中の一つだった。
そのRISHIRI WAVE(HP)の方がマルゼンと言う宿を営んでいる。
らしい位の情報しか無かったが、

何はともあれ。  マルゼンさんを探す。


自分はつくづく運がいい。
お宿マルゼンさんを見つけ、自転車を停める場所を探していると。
『よく来たね~!しかし凄い時に来たね!今日最高だよ♪』
とMANANIさんが出迎えて下さった。

『ちょっと待ってて!』と、しばらくすると。



RISHIRI WAVEのTOSHIYAさんにお会いすることが出来た!
そして。
『なんならこの後、行くかい?』と、TOSHIYAさん。
断る理由は何もない。  

『はい!』と。

15時に待ち合わせ。
それまでの間にキャンプ場へ行きテントを張り。



ボードとウェットだけを積んだ超軽量化仕様でマルゼンさんへ戻る。
30分も早く着いてしまった。
が、待ち兼ねていたように『行くよ!』と。
TOSHIYAさんの車に飛び乗り、島の反対側。

利尻島のメインブレイク。  神磯【KAMIISO】へ向かう。
途中。  急に周りが明るくなり。
海にばかり気を取られていた自分の左手の光景に思わず息を飲んだ。



利尻富士。

稚内へ向かう途中、天気が良ければ海沿いの道から利尻富士を見る事もできるらしいが、これまであいにくの天候が続き、フェリーからでさえその姿を容易には見せてくれなかったこの山。
息を飲んだ。
こんなに存在感のある山は始めて見た。
山に魅せられる人達の気持ちが少しだけわかった気がした。

心の中で。  『登ってみたいなぁ~。』  と、そんな事を少しだけ考えていた。

さらに南へと向かう車。  右手の海を見ていると。  行けば行くほどに。
波のサイズが上がって来ている。
いよいよドキドキしてきた。
TOSHIYAさんと話しながらも、そこにあるであろう波を考えると武者震いした。

緩やかなカーブを抜けると。  『あそこに一人いるでしょ、あそこだよ!』と。
その方向を見ると一人のサーファーの姿が見える。

そして。  ついに見た。  

利尻の波を。











TOSHIYAさんはすでにスーパーハイテンション(笑)
着替えながらもセットが入るとヒューヒュー言っている。

またしても武者震い。 『やなっち!行くぞ!!』と、チャンネルからアウトを目指す。

近くで見れば見る程。  恐ろしく、そして綺麗な波だ。
ひとまずセットをかわせる場所にポジションを取る。
ドキドキを深呼吸で必死に抑える。
相変わらずTOSHIYAさんはセットが来る度にヒューヒュー言いながら、ピークのど真ん中で波を待ち続けている。
TOSHIYAさんが雄叫びと共にセットのピークからドロップしていく。
しばらくすると。
自分のポジションにセットが入って来た。  見送ろうかどうしようか一瞬考えた時。
『GO!GO!』と突撃命令が下った。  腹を決めテイクオフした。

Go for it!
ボトムターンをするまでの一瞬、世界がスローモーションになった。
フェイスに入ると急に世界が早送りになり全身にゾワゾワっと何かが駆け巡った。
クローズセッション手前でプルアウト。
沖へ戻りながらヒューヒュー言っている自分がいた。
『ありがとうございました!』とTOSHIYAさんに言うと。
あっちあっちと岸の方を指さした。  ん?と振り返るとそこには利尻富士が。

思わず拝んだ。  この時、ここまでのすべてが報われた気がした。
利尻富士を見ていたら。  またぐっと来た。
しかし。
そんな場合じゃないだろうと言わんばかりにセットが来て慌てやり過ごそうとすると。

『GO!GO♪』  待たしても突撃命令だ(笑)
GO!GO♪と言われて行かなければ男がすたる。
慌てて体勢を立て直し。  なんの意図もないが、まさかのスーパーレイトテイクオフ。
それでも、ここまでの道のりで勝手に鍛えられた下半身の筋肉が自分を救う。

自分の中で。  今までで一番際どく。  そして最高のテイクオフだった。

それから2時間程。  たったの三人でこの波を分けあった。
正確には分け与えていただいた。

人と自然に。

海から上がると。  これまでの迷いはすべて吹き飛んでいた。
まだ見ぬ波があり。  まだまだ出会うべき人達がいる。
点と点で繋がった線を円(縁)にするために。
この先もまた悩んだり、息詰まったり色々あるだろう。
でも自分には目指すゴールがあり、自分もそれを望んでいる。  それだけでいい。

帰り道。  雲の切れ間からオレンジ色の利尻富士が見えた。

ふとした話しから。  思いもよらない展開になった。
8月3日&4日。  利尻島で働く事になった。
すべて天候次第だが。  山岳ガイドをしているTOSHIYAさん。
NHKのロケのガイドをするらしい。
その。  ポーター(荷物持ち)を仰せつかった♪
最北の日本百名山。  利尻富士。  標高1721㍍。  山は未知の領域だが。

あの姿を見たら…

【行き当たりバッチリ!】TOSHIYAさんが教えてくれた言葉だ。
なんだかすごく気に入った。
どこにどう行き当たっても、今その時点が最高でバッチリならそれでいいじゃん!
と、自分は理解した。

戻るとMACHIKOさんがこう言った。  『今日はTHE DAYだったね!』と。
TOSHIYAさんも。  『今日の波は久々の◎だ!』と言っていた。
この巡り合わせに感謝するしかない。

その日の夜。  TOSHIYAさんが『飯行こう!』と誘って下さった。

お店に着くと。
一心不乱に何かを書いているTOSHIYAさん。



メニューの注文のようだ。
珍しい島でしか頂けない料理が次々と。





ビールと笑顔とともに。  TOSHIYAさんから語られる言葉の一つ一つが。
自分の心を見透かしたかのようにど真ん中のストレートで入ってくる。
『迷った時、道が二つに別れた時。どっちに行ったっていいんだよ。結局またその先で、その別れ道は繋がってるんだから!』

キャンプ場に送ってもらい空を見上げると。  流れ雲の隙間に星が瞬いていた。

今朝5時過ぎ。



電話がなった。  『やなっち!波ありそうだよ!今から行くね!』と♪

 

第九十二話  Great Surf jorney Day-11 
“ NO SURF NO LIFE ” 08-1

携帯『やなっち!波ありそうだよ!今から行くね!』  ブロロロ~ン♪

『おはようございます!』

ポイントへ到着すると。  4人のサーファーさんが波乗りをしている。
『あぁこりゃーポイントパニックだ!』と、TOSHIYAさん。
自分を入れて計6人だ…。  まず混雑とは無縁のこの島。
島内にサーファーは10人位らしい。
つまり今、目の前には島中のサーファーが集まっていると言っても過言ではない。
そして利尻島のサーファーさんは皆さんショートもしくはファンボード。
島にロングボーダーさんはいない。
というよりは、島にロングボード自体が一本もないらしい…。
そんな話しを聞き、きょとんとしながら思わず笑ってしまった。

さて。
昨日とは打って変わってメローな雰囲気の波乗りを終え。
この青空の下、何をしようかと企んでいる自分。
恐怖体験をする、およそ12時間前の出来事だ。

ちょっと風が強まって来たので。  テントを風をかわすと思われる場所へ移動。
相変わらずいい天気♪
ちょっとサイクリングにでも行きますか♪
と、
ハコブンダー(リアカー)を外し軽量仕様で利尻島の自転車専用道の山道を駆け巡る。

「日本一周 ちゃりんこの旅」 北海道利尻島内の景色

小高い場所にある橋から港を見渡したり。
姫沼と言う場所に赴き景色や鳥のさえずりを楽しみ。

「日本一周 ちゃりんこの旅」 北海道利尻島内の景色

「日本一周 ちゃりんこの旅」 北海道利尻島内の花々

野に咲く花を見たりと。  素敵過ぎる午後を過ごしていた。
あの悪夢の8時間前の出来事である。

キャンプ場に戻ると。  今日、山から下山してきたと言う仙台の岳人が。
『今夜は荒れる見たいですよ』と。  えっ?こんなにいい天気なのに?
と思いつつも天気予報を確認すると。

注意報  利尻:大雨・洪水・波浪

ふと、強さをましている風も気になったので、それも確認してみると。  南南西の風10㍍
と。
ちなみに今現在テントを揺らしている風は5㍍らしい。
ほほぅ。  この倍か。  ちょっとヤバいかも…。

ベテランの岳人やキャンパーさん達もテントを移動したり、重しでロープを止めて補強したりしている。
その光景にいよいよ焦り、方位磁針で方角をしっかり確認し、南南西の風をかわし雨が流れ込まないであろう高台へテントを再び移動。  ブロックやロープでテントをがんじがらめにした。
いつもは散らかしているテント内も必要無いものはコンテナボックスに押し込み水浸しにならないよう配慮した。
その時、一本の電話が鳴った。  マルゼンさんのKOUJIさんだ。
『今日、夜荒れそうなんで、寮が空いてるからそこ使ってください!』と、有り難いお言葉。
まさに救いの神だ。
が、しかし。  その有り難い申し出をお断りする自分。

何故かと言うと。
その悪天候になると言う危機的状況が自分の気持ちになぜか火を付けていた。
今まで、これから大荒れになるとわかると。
あまり無理せずに安宿を探したり、雨風を凌げる場所を探したりした。
が、今日はこの状況から逃げ出さず、自分がどれだけ困難な状況に立ち向かえるのか。
それを試してみたくなっていたのだ。
その神の救いを断ってしまったのが、自分の愚かさを知る6時間前の出来事だ。

日没直前。  東の空に不気味な形の雲が現れた。

「日本一周 ちゃりんこの旅」 北海道利尻島内の雲雪の怪しい空

いよいよ決戦が近付いているようだ。
徐々に強まり出す風。  時折。  バタバタバタァー!っと勢いよく煽られるテント。
ポツポツと雨が落ちて来た。
回りを確認しテントの中に潜り込んだのはゲーム開始の4時間前の事だったと記憶している。
雨音と、風にしなるテントの中で早めの就寝。
寝てしまえばこの雨や風も気にならないだろうと。
しかし中々熟睡は出来ない。  が、僅かながら仮眠した。

Ⅲ★§#£㈲!♪  と、言う轟音で飛び起きた。

午前零時。  ゲーム開始だ。
横殴りの雨が風に乗って勢いよくテントを叩く。
風は継続的ではなく断続的に襲いかかってくる。
ここは北東に開けた山の麓。  利尻富士に当たった南西の風が勢いよく吹きおろしてくる。
山の中腹の木々がゾゾゾッと風に吹かれ不気味な音がした数秒後。
びゅぅぅ~!っとこのキャンプ場にその風が到達する。
そしてテントをまくしあげ、その力の限りテントを潰しにかかる。
その度に心の中で『うぉぉぉ!!』と叫んでいる。

しかし、おかしい。  明らかに風は南東側から強襲してくる。
北東に入口を向けたテントの横っ腹目掛けて猛攻撃してくる。
予報でみた通に南南西の風をかわすべく、林を西に、コテージを南に、入口は北に向けた。
南と西にはペグ(杭)ごと吹き飛ばされ無いようにブロックを積み補強もしたが。
現在、一番手薄な東側からの猛攻を受けている。

なんで!?やめてくれ~!
山に当たった風が時に回り込んで攻めてくるようだ。
予報に反した弱点をつかれ完全に浮き足だつ自分。

ひと際大きな風の音が山を下りてくる。  

1   2   3秒後。   
どぉん!!   と風がテントに押し寄せて、その力に耐え兼ねたテントのフレーム(ポール)がギシギシギシ♪と軋み、そして折れた。
この風と雨ではどうする事も出来ず風が吹く度にフレームを抑え、飛ばされ無いように必死で支えた。

午前3時。  真夜中の戦いは終息を迎えた。
とは言え。
油断していると風が吹き付けてくるが、ピーク時の攻撃力はない。
主力は去ったようだ。
雨と風が弱まるのと同時に眠気に襲われ。  そのまま眠りに落ちた。

朝。  夜中の天候が嘘のように。
風は止みシトシトと小雨が降るばかり。  夏草や 兵どもが 夢の跡…

「日本一周 ちゃりんこの旅」 北海道利尻島で強風に耐えたテント

「日本一周 ちゃりんこの旅」 北海道利尻島で強風で折れたテントの支柱

キャンプ場にいた6つのテントの兵どもは
家屋半壊 一棟  床上浸水 二棟  床下浸水 三棟   それぞれに甚大な被害をもたらした。

子供の頃。  強風波浪注意報と聞くと。  そこそこの学年になるまで。
恐怖!Hello~♪注意報だと、勘違いしていた。
とにかく大変な事態が迫っているようだ。  と、子供ながらに感じていた記憶がある。

ともあれ。  恐怖、いやっ…強風の後には波が立つ訳だ。
別の用事でマルゼンさんに向かったものの。  波乗り好きが三人集まれば。
これもまた自然の摂理。
当たり前のように  『行くか!』  となる訳で(笑)

北海道利尻島宿屋マルゼンでサーフィンへ行く準備

北海道利尻島宿屋マルゼンでサーフィンへ行く準備

仕事の僅かな合間を縫って。  TOSHIYAさんとKOUJIさんと三人で♪
そして後から先日サーフィンデビューを果たした利尻島のファイヤーマン、KOUTAROUさんも来るようだ。
神磯P到着。
若干オンショア気味だがサイズは十分。  自分にはちょっとハード…。
TOSHIYAさんは『行ってきな!』と今日は入るのをやめたようだ。

波に飢えている?KOUJIさんがあっと言う間に支度をし、一目散に海へ向かう。
自分も着替え、後を追う。
波のサイズは利尻島到着初日と同じ位。  でも、波数が多くやはり自分にはちょっとハード。
アウトに出るのにセットに捕まりぐるんぐるん♪

KOUJIさんは僅かな時間をフルに楽しもうと、その優しげな顔に似合わずガンガン攻めている。
TOSHIYAさん撮影のKOUJIさん

北海道利尻島神磯サーフィンポイントでのテイクオフ

TOSHIYAさん撮影の誰かさん
北海道利尻島神磯 サーフポイントでやなっちのライディング

明らかに腰が引けている(笑)

やっとの思いで二本波に乗り岸を見ると。  TOSHIYAさんが自分を呼んでいる。
慌てて戻ると。  KOUTAROUさんが到着していた。

TOSHIYAさんが『やなっち、元村ポイントの方で面倒見てあげて!』と。
神磯PはKOUTAROUさんにはまだ危険と判断し若干うねりをかわすポイントに二人で行ってケアしてあげてね!と言う事のようだ。
この後すぐに仕事に戻らなければならない自分達よりKOUTAROUさんと一緒に行動する事により少しでも長く波乗りを出来るようにとの粋な計らいだ。

後からふと思った。
TOSHIYAさんが海に入らなかったのは、後から来るKOUTAROUさんを思っての事だったんだと。
無理してKOUTAROUさんが海に入り何かあったらと。
きっとそう考え波乗りしたい気持ちをぐっと抑えたのだ。
それに気付いた時、TOSHIYAさんの懐の深さと島の若手サーファーを思う気持ち、そしてこの島への思いの大きさを知った気がした。

さてその後。  KOUTAROUさんと一緒にポイントを移動。

北海道利尻島 神磯サーフポイントの海岸

北海道利尻島神磯サーフポイントでサーフボードにワックスを塗り、エントリーの準備

沖縄のシーナサーフ仕込みの陸トレを行い、いざ海へ。

波に押されジェットコースターに乗ったような奇声をあげ、腹ばいでスープに押されて行くKOUTAROUさん♪
『なまら面白れ~!!』と、顔をくちゃくちゃにして笑っていたのが凄く印象的で、見ているこちらが嬉しくなった。

この感覚、この気持ち。    久しぶりだった。

沖縄での毎日は、サーフィン初体験の方達を補助しながら波に乗ってもらう事が仕事だった。
思えばやはり最高の仕事だ。  いや、あれはもはや仕事ではない。
その人の初サーフィンに立ち合い、そしてたくさんの笑顔を見た。

中々立てずに悔しそうな顔をしていた人も。
クタクタになり元気さえなくなりかけていた人も。
諦めかけてつまらなそうな顔をしていた人も。

波に乗れたその瞬間。  信じられないくらいの笑顔で、みんな子供見たいに目をキラキラさせる。

サーフィンってすごい。
よくよく考えれば今の自分だってそうだ。
波に乗れば小さな悩みも迷いも全て吹き飛ぶ。
自分は波に乗る事により。  生きている事をリアルに感じているのだ。

もしサーフィンに出会っていなかったら?  そんな自分の人生は想像さえ出来ない。
下手でもいい。  自分にとって生を感じさせてくれる波乗りを。
ただただ好きで在りつづける事。  そこに自分の存在価値がある。

サーフィンが好きな気持ちはプロサーファーさんやレジェンドサーファーさん達にだって負けないつもりだ。
もちろん勝ち負けの世界では無いが自分の中の誇れる気持ちだ。
今、健康であり。  波乗りを思いっ切り楽しめている事。  

それに感謝だ。

二人でクタクタになるまで波と戯れた後。  KOUTAROUさんが利尻島をぐるっと一周してくれた。
綺麗なとても綺麗な島だ。  短い夏を思いっ切り楽しんでいる島の木々も人々も。
キラキラと輝いて見える。

楽しむ事。  楽しい人生を送っている人ほど。  その輝きはより一層増すように思えた。

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*明日より3日間。利尻富士登山とその準備の為、波乗り旅日記の更新をお休みします。

【シーナサーフからのお知らせ】
本日より、画像をクリックすると原本サイズの画像をご覧いただけるように設定しました。
日本各地の自然やサーフィンの様子をお楽しみください。

 

第九十三話  Great Surf jorney Day-12 ~ 15 
“ RISHIRI Greatful Days ” 08-02 ~ 05

もちろん全ての出来事に優劣などはつけられない。
そうとわかっていながらも。
この旅の中でも。
自分のこれまでの人生の中でも。  利尻島で過ごした時間は。  とても輝いている時間だった。

何から書こう。
思い返すだけでワクワクするしドキドキもする。
自分が利尻島で過ごした時間を文章にしてどれだけ鮮明に残せるかわからない。
でも。  自分の心の中には。
鮮明な記憶として生涯残るであろうそんな色鮮やかで貴重な日々だった。

その全てに感謝しながらこの日記を綴ろうと思う。

【不安と期待と。】
朝4時。  鳥が鳴き東の空がその色を刻々と変わっていくそんな早朝に。
KOUJIさんと二人でサーフィンへ向かった。
軽自動車に無理矢理ボードをねじ込み、おかしな体勢のまま神磯Pへ。

オンショアで面は乱れがちだが出来るか出来ないかの判断に迷うほどでもない。
島のサーファーさんも一人やって来て三人で海に入った。
リラックスした時間。  相変わらず正面には利尻岳。
雲のベールに包まれなかなかその頂きは見えないが存在感は十分だ。

明日。  あの山に登る。
果たして自分に登れるだろうか?と言う不安はまだあまりない。
ワクワク先行状態だ。

波乗りを終えKOUJIさんにキャンプ場へ送ってもらいテントの撤収を始めた。
管理人のおじさんや仲良くなった東京からきたITOさん夫妻、岐阜からきたご夫婦とぺちゃくちゃ話ながら、青空の下荷物をまとめる。
今日は明日の登山に備え、マルゼンさんの寮にお世話になる。

話を少し戻そう。

なぜ、明日山に登る事になったかと言うと。
NHKの『小さな旅』と言う番組のがロケあり、その舞台が利尻岳。
*9月11日AM9:00よりNHKにて放送予定
TOSHIYAさんがその山岳ガイドなのだ。

1泊2日の行程。  その計9名の水・食料等を運ぶポーター役を興味本位で引き受けたのだ。
もちろん。  これは仕事なので、疲れたから途中で下山などはありえない。

そこがいい♪  それと。  どこまで自分がやれるのかを。  単純に知りたかったし。
一番の要因は。  純粋に山への興味だ。
知らない世界がそこにある。  知りたい。  と、言う欲望な訳だ。

夕方。  寮に移動し、窓から道を眺め島で暮らす人達の日常を感じていると。  TOSHIYAさんから集合がかかった。

マルゼンさんに向かう。  これからパッキングが始まる訳だ。

一日目の夕食・二日目の朝食・昼食。 調理用水に鍋・食器にガス。  9人分となると大量だ。
それを三人で分担して持つ。  足すことの、自分の飲料水4㍑。
レインコートにヘッドライト、寝袋にマットにet cetera

TOSHIYAさんから借りたザックはあっという間にパンパンに膨れ上がった。
恐る恐る背負ってみる。  こっ!これは…  重い!…のかな?

確かに重いが普通を知らない。
通常、登山する人達が背負っているザックがどれくらい重いのかがわからない。
よって。  比べる事が出来ない。
とりあえず。
まだMAX状態ではないが、この膨れ上がったザックを背負って動く事が出来るので問題無し!との判断を下した。

ある程度パッキングが済むと。  とても重要な作業が待っていた。
TOSHIYAさんから飴の配給だ♪



塩飴 男梅 珈琲飴 ミルクキャンディー。  そして今回は特別にハイチュウも支給された(笑)



それはそれは特別な事らしい。

明日の集合時間は午前4時。  荷造りを終了し、KOUJIさんと寮に戻り明日に備え早めの就寝。
と、行きたいが。
こんな時に。  子供の頃にかかった病気が再発してしまう。

病名:遠足前夜興奮覚醒症候群(笑)

こんな恐ろしい精神の病に突如として侵されてしまった自分は。  高ぶる気持ちを抑える為に。
Beerと言う薬を飲み眠りに就いた。  こうして登山前日は過ぎて行った。

<1721m>
AM3:15。  目覚ましが鳴り。  パチっと目が覚めた。  カーテンを開けると既に夜の闇はなく。
うっすらと空が明るくなって来ている。



KOUJIさんは既に起きているようだ。

身支度を整えマルゼンさんに集合。  最後のパッキングを終え車にザックを載せ登山口へ。



しかし。  フルに入れたザックは昨晩のそれとは違い鉛のように重かった。

登山口へ着くとすぐにNHKのスタッフさんとアナウンサーの方が到着。
何やら打ち合わせが始まっている。



自分の役目は荷物を運ぶ事。  8合目と9合目の途中にある山小屋までが勝負だ。
そこまで辿り着けばこの役目の80%は完了だ。

いざ出発。  出だしの数メートルは。  あっ!余裕かも♪  と、思ったものの。
すぐにそれは間違いだと気付いた。

夏休みを目前にした一学期の終了式。  その帰り道。  全て教科書に道具箱。
体操服に上履きに。  鍵盤ハーモニカと朝顔の鉢。  肩に食い込むランドセル。
そんな夏休みを目前にした最後の試練の下校時を思い出した。

歩く度に肩へ食い込んでくるその重さ。  まだ4合目にさえついていない。
ちょっとやばいかも…。
登山に不慣れで足元もおぼつかない。
しかし。  行軍は既に始まっている。
恥ずかしながら息はもう上がっていて呼吸は荒い。



合間合間に撮影が入りつつ、4合目5合目6合目。



気付けば肩の痛み以外は体も慣れ、景色を楽しむ余裕も出てきていた。

少しづつ変わる景色。  麓の街がどんどん小さくなり、見える景色がパノラマになって行く。
礼文島もクッキリと見える。



途中、途中でKOUJIさんが木や花の名前を教えてくれる。
覚えきれないくらいたくさんの花が最北の島にそびえる山に咲いている。



これは驚きだった。  厳しい冬の寒さに耐え短い夏に咲く花。



小さい花のその力強さに元気をもらった。



8合目、長官山。  水平線にロシアのオネロン島、サハリンの島影が見える。



山小屋まで後少しだ。  最後の力を振り絞り山小屋へ。
既に膝はケラケラと笑っていた。

ここで荷物を下ろす。  一気に軽くなるザック。  まるで重量比が違う惑星に降り立った気分だ。

その後、山頂を目指す。
ガレ場と言う足元の悪い急勾配をよじ登って行くと。
ついに。  その頂きにたどり着く事ができた。



そして。  その頂上にはご褒美が待っていた。



360°の景色。  下から湧き上がる雲。  奇岩。  そして切り立った斜面に広がる花畑。

『すごい』そのすべてに圧倒されると言葉もそれしか出てこない。
それでいいのかも知れない。  その気持ちを表現する言葉が見当たらないのだ。
感じる事が大切なんだと思う。

しばらく山頂で時間を過ごし、山小屋へ夕食の準備に向かう。
今日の夕食はカレーライス♪  



カレーライスってのはすごい。
自分は今までカレーライスが大嫌いで食べられない!!って言う人にあった事がない。
もし、そんな人がいたら。  この時、自分が山小屋で食べたカレーライスを食べさせてあげだい。

最高の食材を使用し一流シェフが作るどんなカレーライスよりも。  この条件の中で皆で頂く利尻岳山小屋店のカレーライスは。
最高だ♪

夕食を終えると。  自分が楽しみにしていたイベントの時間が近付く。
Sunset。
三人で見晴らしのよい場所へ移動。  
西の空に沈み行く太陽。



空と雲を人間には創り出せない色に染めながら、雲に隠れて西の水平線に沈んで行った。
当たり前だが、この太陽は明日の朝、東から昇ってくる。



山小屋に戻ると。  みんなのザックの中から。  どこからともなくお酒が出て来る(笑)
いつの間にか居酒屋さんのようになった山小屋でそれぞれの一日が終わって行った。

<フィールドは無限大>
太陽は西に沈む。  そして東から昇る。  これは地球が生まれてからずっと続いている。
もちろん今朝も太陽は東から上がった。
自分は夕日と朝日が大好きだ。
夕日を見ると心が静まり。
朝日を見ると太陽の光が力となって全身を駆け巡る。  日が沈んたら眠り。
日が昇ったら目を覚ます。
1番シンプルな生活のリズムのはずだ。

なのに。  眠らない街があり、人間のリズムが変わり。  バランスを崩して行く。  人も自然も。

さて。  撮影もいよいよ終盤だ。
再び山頂に登り収録が進んで行く。



すべての行程を終え。  下山の時を向かえる。
少しずつ麓が近付き背後から山の頂きが自分を見下ろしている。
振り返る度に山頂は高くなって行く。

下山しながらこんな事を思っていた。
今までの自分は視野が狭かったなと。  こだわりは大事だ。
が、こだわりを持ちすぎると、それしか見えなくなってしまう。

海以外にも。  山があり。  空がある。
その事に気づき自分の遊びのフィールドを開拓してきたのがTOSHIYAさんだ。
夏の山に登り、冬の山を滑る。
モーターパラグライダーで空を飛び。  波に乗り、海に潜り、シーカヤックで海原を駆け巡る。
おそらくTOSHIYAさんの中に何が1番ってものは無いんだろうと思う。

その瞬間その瞬間で。  条件にあった自分がやりたいと思った事をする。
そんな生き方。  格好良すぎる。
そして、その生き方が充実している事を表情がすべて物語っている。

山を下っていくと、山頂付近の涼しさが嘘のように蒸し暑くなってきた。
TOSHIYAさんがこう言った。  『こりゃ海だな海♪帰ったら泳ぐか♪』
念のために確認するが、山に登り下山途中の帰り道である。

山から降り、マルゼンさんに戻ると、片付けは後回しで海遊びの準備に取り掛かる。
スノーケル&マスク。  ライフジャケットにカヤックのオールに釣り道具一式。



思い着く限りの遊び道具を持ち海へ向かう。  信じられないくらい冷たい海に飛び込み、体をクールダウン。
お次は釣竿をセットしたカヤックで沖へとこぎだした。  そこにいる体の大きな子供達は。
思いっ切り今と言う時を楽しむ事の達人だった。

釣った魚を肴に。  自分の送別会を開いてくれると。  そう言ってくれた時に。
あっ…そうだ…  自分は旅の途中だったんだと思い出した。

前からここに居て。  これからもここに居て。  TOSHIYAさんとKOUJIさんとこの島と。
大自然とそこに住む暖かい人達と。  ずっと一緒に居られるような。 そんな錯覚に捕われていた。
出来る事ならずっとこの今を楽しんでいたかった。
でも、それ以上にこの先に待ち受けている旅での日々に。  目指すべき自分の心の中の頂きに。
進みたいと思った。
利尻岳の山頂にたどり着いた時のように。

一歩一歩。  前に進めば必ずたどり着く。  そこに何が待っているかはわからない。
もしかしたら何も無いかもしれない。
それでも。  ゴールにある。  ゴールの先に何があるのかを知りたい。

<利尻島発13時10分>
昨晩夜遅くまで続いた楽しい時間の中で、この後どうするか考えていた。
いくつもの選択肢が生まれては消え。  昨日は何も決められなかった。

朝目覚めた時。  ぱっと閃いた。  礼文島に行こうと。
荷物をまとめ出発の準備を整える。
マルゼンさんに向かい皆さんに挨拶をする。





毎回そうだ。  その過ごした時間の密度が濃ければ濃い程。  自分にこれは別れでは無い。
と、言い聞かす。
でなければそれは、あまりにもつらすぎる事だから。  だから『行って来ます!』と言う。
そして『行ってらっしゃい』と送ってもらう。



それは『ただいま!』と言いたいからだ。

13時10分  出港の時。  島と船は虹で繋がれていた。  離れて行く陸と船。
そのラインは切なくも切れてしまう。
でも自分は信じている。
この紙テープは切れたとしても。  人と人との繋がりは決して切れないと。



そう信じている。

第九十四話  Great Surf jorney Day-15 ~ 17 
“ REBUN WAVE ” 08-05 ~ 07

礼文島についてから一目散にキャンプ場へ向かう。
雲行きが怪しいからだ。
今夜から風が強まり明日は12~3メートルの風が吹くらしい。
数値的には先日の利尻島で(自分に)大災害をもたらした風より強い。

キャンプ場に着きテントを張ろうとしたら。
…?  ペグはどこに打つのかしら?
高床式になった木のデッキがテントをはれるスペースだ。
このパターンは今までもあったが、風もなかったのでそのまま何もせずにテントだけはっていた。
しかし、完全に強風恐怖症になった今の自分にとってはペグで回りをがっちり固めなければそこに安らぎはない。

回りのテントを見ると。  皆さん巧みなロープワークでテントを固定している。
ロープか…。  4本しか持ってない…
最低でも6本のペグで固定するこのテント。  4/6をロープで固定しただけであの強風と戦えるのか?
いや…。  勝敗の行方は結果を見なくてもわかる。
無理だ…  確実に飛ばされる。

一人でパニクり右往左往。
冷静になり、荷物を引っ掻き回しテントを固定する物を探す。 
そして足りない分のロープを現地調達。  かくして、がんじがらめのテントは出来上がった。



しかし、これであの時以上の強風に果たして耐えられるだろうか…。
不安なまま夜を向かえた。
そして…。  朝になった♪
この間の経験が生きた瞬間だった。
予報の風向きに惑わされず、風の通り道を考え。  風を交わす場所を探した。
結局。
山と林が風をブロックしてくれた。
風はここまで届かず、心配をよそに安眠をもたらしてくれた。

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<8月6日>

今日はひたすらテントの中で日記を書いていた。
途中で昼寝もしたがほぼ一日を日記に費やした。
ようやく書き上げた頃には日も暮れていた。

夕食にパスタを茹で空腹を満たす。
その昔。  鍋からはみ出たパスタが勢いよく燃え上がった頃が懐かしい。
今ではすっかりアルデンテだ♪

まぁそれはいいとして。  ついさっきの出来事だ。
引率の先生に従えられた子供達10人くらいがキャンプ場に来ている。
彼らの行動や言動は非常に興味深い。
子供の社会にも様々な駆け引きがあり、そして彼らなりの掟があるようだ。

それにしても。  引率の先生の放置っぷりには目を見張る物がある。
中年のチャリダーが子供達を怒鳴りつけるレベルだ。

夕食を食べ終えた子供達はキャンプ場を駆け巡り鬼ごっこに興じている。
そのあまりの熱狂ぶりに、一日中走りクタクタになった中年チャリダーは『おまえら!いい加減にしろ!ここは公園じゃねんだ!キャンプなんだぞ!』
そう。  ここは。  緑ヶ丘公園キャンプ場である。
どちらも間違いではない。

そんな時。  一人の男の子が転んだようだ。
『痛い~っ!足が痛いぃ!』と今にも泣き出しそうな声で叫び始めた。
その叫び方が尋常では無かったので、自分は慌ててテントから出て子供達の方へ向かった。
すると、それを遠巻きに見ている中年チャリダー。
完全に酔っ払っているヘラヘラしている外人カップル。

あなた達はそんなに近くにいるのに…。  と、思いながらも。
とりあえずその子の場所まで行き『大丈夫か?』と声をかける。
もちろん。  大丈夫じゃないから本人は泣き叫んでいる。

どうやら濡れた芝生に足を滑らせ、捻挫をしたようだ。
その男の子を落ち着かせながら回りの子供達に『先生呼んできて!』と伝令を頼んだ。

しばらくすると。  リアカーを引っ張った子供達が戻って来た…
『先生がこれに載せて運んで来なさいって!』
え…?  先生は様子さえ見に来ないの?
まぁ仕方ない。
右足首が痛いようなので、そっちをかばうように男の子をゆっくり支えながら立たせる。
『乗れるか?』と聞くと。
コクりと首を下げ、右足を軸にして左足を勢いよく振り上げ。 ピョコン♪とその子はリアカーに乗った。

あっ…。
この子にとって泣くほどの痛みも、リアカーに乗れると言う好奇心の前では無に等しかったようだ。
それにしてもこの先生は…。  究極の放任主義なのか、それともすべて計算づくなのか…。
結局それは最後までわからなかった…

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<8月7日>

実は。  ここ礼文島でも。  サーフィンが出来るらしいのだ。
利尻島を離れる直前にTOSHIYAさんがざっくり♪と地図にポイントを記してくれた。



最初はせっかくここまで来たんだから礼文島にも♪  くらいの気持ちだった。
でも。  サーフポイントがあると聞いたらその波に乗らない訳には行かない。
その昔。  ここ礼文にも一人だけサーファーさんがいたようだが、今現在この島にはサーファーさんはいないらしい。

昨日まで吹き続いた南よりの風は弱まり。  天候も回復してきた。
テントや荷物はそのままに。  ハコブンダーにウェットやら板を積み込み。
まずはフンベと言うポイントを目指す。  礼文島の1番南側に位置するポイントだ。

走り出してすぐに。  利尻岳がくっきりと見え、『あぁこの間あの先っちょにいたんだなぁ~♪』と少し感慨深い。



そのまま海沿いを(礼文島の)知床方面へ30分~40分走ると奮部と言うバス停を発見。



海を見渡すと。  確かに。  至る所で波が割れている。



が…。



インサイドにゴツゴツ岩がゴロゴロあり…。
果たしてどこのブレイクがこのポイントなのかがわからない。
しばらく行ったり来たりしながら波とにらめっこするも。
いいブレイクをしている場所のインサイドには必ず岩が剥き出しになっている。
結局、ここだ!と決め切れず。  島の西海岸を目指す事にした。

TOSHIYAさんが教えてくれた地図には。
元地海岸と言う場所に丸がしてあり『リーフ』とだけ書かれている。
しかし。
奮部と言う地域名のポイントよりは、元地海岸と言うポイントの方が場所を特定しやすい。

よし!ここでウダウダしててもしょうがない。  そこに行って見ようではないか!
と、鼻息荒く走り出し元地海岸を目指す。

島の西側に行くには峠を一つ越えて行く。





久しぶりにいい汗をかきながら坂を登り、トンネルを越えると、西側の海が見えてきた。



バラけてはいるがうねりが見える。  期待大♪
元地海岸に行くまでにも波がブレイクしている箇所があるがどこも岩が見え隠れしている。

むしろ。  岩にうねりがあたる事をきっかけに波がブレイクしている。
他の場所には目もくれず元地海岸を目指す。

到着♪  おぉ!波がある!!





…けど。  岩もあるぅ…。

またまたしばらく様子を伺う。  波を見ながらシュミレーションしているのだ。
あそこのブレイクは。  テイクオフ直後に岩で撃沈♪
こっちは?  テイクオフして少し行くと剥き出しの岩♪
あそこは?  ん~。  あのブレイクのしかたは…。  激浅岩盤ブレイク♪巻かれたらアウト!

で…どこの波に乗るのぉ~!!  もう訳がわからない。
どこのブレイクでシュミレーションしても必ずGame Overなのだ。

自分にはあからさまに危険な香りがいっぱいの海に一人で入る勇気がない。
小心者と言われても仕方ない。  怖いもんは怖いのだ。

うなだれながら道を引き返しキャンプ場に帰ろうとすると。
綺麗に波がブレイクしている場所を発見♪
でも。  どうせまた岩があるんでしょ!と、ふて腐れながら波を見ていると。



ピークからグーフィーにブレイクしていくラインに岩が無い。
時折、昆布がゆらゆら海面下に見え隠れしているが岩はない。

おお!?行けるかも!
そこから心の中で格闘が始まった。
『これは行けるよ!勇気をだせ!』
『いやいや。TOSHIYAさんが教えてくれたのは元地海岸だ。ここはちょっと違う場所だ…』
『でも岩は見えないし、いい感じに割れてるじゃん!』
『いやいやいや~ポイントじゃないって事はそれなりの理由があるってもんだよなぁ~。』
『じゃあなにかい?このまま礼文島でサーフィンしないで帰るのか!?』
と。
こんな具合に二人の自分が心の中で口論している。

結局。  勝ったのは好奇心の方だった。  昨晩のキャンプ場の子供と一緒なわけだ。
好奇心は恐怖にすら勝る。
自分に。  もし無理だったらすぐに海から上がろうと、はやる気持ちに保険をかけ着替えを始めた。

すると。  そこへ。
なにかと利尻島から顔を合わせ、話をするようになった名古屋のおじさんが通りかかった。
『あぁ!おじさん!』と声をかけると
『なんだサーフィンするのか?  じゃあちょっと見学していくかな(笑)』と。



そして厚かましくも、おじさんに自分のカメラを託し礼文島でサーフィンをした証拠写真の撮影を依頼した。
いざ海へ!



内心かなりドッキドキだがもう引き下がれない。  Eddie wolud go!だ。
因みに。  今回の旅で始めてリーフシューズを着用した。
それ程びびっている。

まずは波がブレイクしていない場所からピークに回り込む。
一~二本波を見てピークにじりじりよって行く。  クリアな海水。  思わず下をのぞく。
そんなに浅くない。  ゆ~らゆ~らと利尻昆布ならぬ礼文昆布が揺れている。

よし!行ける!  いきなりセットは狙わない。  手頃な波を待ち、まずは一本のってみた。
テイクオフ直後は厚い波だが少し走ると途端に掘れ上がる。
一本目はその急激な掘れ上がりっぷりに驚き即プルアウト。



二本目。  さっきの状況に若干の不安を感じながらも。  テイクオフ。
ちょっといい感じに乗ったが、やはり早めにプルアウト。



なんだかインサイドが気になる。
三本目。



四本目。



そして五本目。  うわっ。



プルアウトが遅れ最後のどっか~ん!に捕まってしまう。
次の瞬間。

全身を恐怖が襲う。



あっ浅いぃ!!  水深はすね~膝くらい。
ぎゃぁぁ!!と心の中で叫びつつ一目散に岸へ引き返した。
こうして。  礼文島での波乗りは幕を閉じた。

教訓。  未知のポイントで波乗りをするときは。  インサイドの水深を計ってからにしましょう!…。
そして改めて思う事が。  ビーチブレイクならいざ知れず。
リーフブレイクを開拓してきた先人達に。  尊敬の念を抱かずにはいられません。

そして。  恐らく。  ここで波乗りをする人はいないとは思いますが。  せっかくなので。
ここを。 【やなっちポイント】と名付けておく事にします。

さて。
明日は午前のフェリーで稚内に戻り、広大な北の大地の旅を続けて行こうと思います。

ではまた!

 

第九十五話  Great Surf jorney Day-18 
“ 最北端を越えて ” 08-08

今朝は珍しく早起き。
なぜか。

礼文島発の始発のフェリーに乗るからだ。

昨晩の。  予報外れの雨でテントの撤収に手間取った。
が、なんとか間に合い香深のフェリーターミナルへ。。

チケットを購入し出向を待つ。  思えば利尻島に7日間礼文島に3日間。
ずいぶん長居をしたものだ。
とは言え。  充実の濃ぃ~い毎日が続いたのでもっと長くいたような気もする。

最高の天気に恵まれて、利尻富士を眺めながら稚内へ。



今頃、TOSHIYAさんとKOUJIさんは山の上かな~?などと考えながら離れて行く利尻富士を眺めていた。

お昼前に到着。  熱い…。  何だか稚内は熱い。
こんな事を言っては沖縄で頑張っているシーナサーフのコガちゃんやオッキーに恨まれそうだが…

只今の気温は23°である♪
利尻島や礼文島では、長ズボンにTシャツ+長袖を着て寝袋にスッポリ収まり快眠だった。
利尻岳の山小屋では長袖二枚にレインコートを着て寝た。
それでもちょっと寒かった。

日本って以外と長いし広い…。

さて。  今日はちょっと一踏ん張りしなければならない。
理由はこうだ。
通常。  今日は頑張ったなぁ!!  と、自分を褒めてあげるラインが70㌔。

そして。
今日お昼前に到着した稚内からルート上にある最寄のキャンプ場まで約60㌔…。
半日でそれなりの距離を走らなければならない訳だ。
この猛暑?の中、10日振りのフルスペック走行。

汗がダラダラ流れてくる。
それでも読めない距離と時間が休む事を許さない。
何にもない海沿いの一本道でSunsetを眺めるのだけは御免な訳だ。

ふと思い出した。  『あっ!あれ使おっと♪』と。
利尻島を離れる時。  TOSHIYAさんがプレゼントしてくれたあれだ。
利尻岳に登った時も大活躍した【Platypus】。



これをリュックにセットした。  これがあれば走りながら水分補給が出来る♪

まずはフェリーターミナルから約30㌔先の宗谷岬を目指した。
汗をダラダラ流しながらも平坦な道のお陰で案外進む♪





ちょっとオフショア(向かい風)が強くなって来た。
風の音で自分的には凄いスピードで走っている感じだが。  実際はかなりのろのろ運転だ。
いたずらに体力を奪われる。

宗谷岬まで後数㌔と迫った時だった。  反対車線を走って来たバイクが。  すれ違った直後に。
クルッと踵を返し自分の所へ来た。
ん?   
『宗谷岬寄る?』とそのバイカーさん。  『はい。寄りますけど…?』と自分。
何が何だかわからない。
が。

次の一言ですぐにわかった。  『種子島で!!』  『あぁぁぁ!!』
種子島から鹿児島行きのフェリーが一緒になったバイカーさんだった!



これには本当に驚いた。  
鹿児島から宗谷岬まで(多分)直前距離で2300㌔。  そして3ヶ月目の再会だった。
『じゃあ宗谷岬で待ってるから!』と栃木のTさん。
さっきまでの疲れもいざ知らず。  全速力で宗谷岬まで走り抜いた。

宗谷岬で改めて再会を喜び会う。  旅で出会った人に旅の途中で再会出来る事。
これは想像以上に嬉しい出来事だ。
まるで運命の人に出会ったかのような気分になる。
チャリやハコブンダー(リアカー)をまじまじと見つめながら。  『よく頑張ったなぁ~と。』とTさん。
確かに、Tさんに会った頃はまだ出発したばかりで。
ピカピカだった相棒達。  本当によく頑張ってくれた。

しかし、流石は宗谷岬。  そこら中にチャリダーやらバイカーさんが溢れている。
皆、ここを目指して来たのだ。
北緯45度31分22秒  東経141度56分11秒   日本の最北端。  宗谷岬を。

だがしかし。  自分にとっては単なる通過点なのだ。
あくまでも前半のゴールは利尻島であり、あの波だった。

つまり。  既に自分の気持ちは折り返し地点を過ぎ。  次の目標を見据えている。

沖縄だ。

出発した時は利尻島が遥か彼方に思えた。
が。
辿り着けた。
一日一日。  一歩一歩。  例え毎日の歩みは小さくても。  諦めずに。  前にさえ進めば。
必ずゴールは見えてくる。

そして。  辿り着く。

そんな単純で当たり前の事を。  今、改めて思うのである。  『ヤレバデキル!』と。
ヤラナケレバいつまでたってもデキナイのだ。
デキナイリユウを挙げればきりがない。
デキルリユウが一つあれば十分だ。

利尻島のマルゼンのMANAMIさんが。  そのブログからエールをくれた。

~やなっちくんにあたしからこの言葉を贈ろう!
大切なのことは  出発することだった。  星野 道夫『大いなる旅路』より~
と。

一歩踏み出すことの大切さ。
そして。  スタートさえすれば。  歩みを止めなければ。  ゴールは自ら近づいてくるのだ。

…ちょっと格好付けすぎた…。なんだかんだといいながらも。
しっかり通過儀礼をはたしている自分(笑)



まぁ記念です記念♪

さて。  栃木のTさんとまたの再会を誓い。  それぞれの旅に戻った。



夕方。  何とか目的地にたどりついた。
そしてまた。  ゴールは少し近づいた。

~宗谷郡猿払村より~

 

第九十六話  Great Surf jorney Day-19 
“ ABU‐狂騒曲 ” 08-09

今、土砂降りのテントの中で日記を書いている。

今日は。  疲れた。  この上なく疲れた。
それもこれも。  全て。

ヤツラのせいだ…

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今朝起きると曇り空。  ゆるゆると吹く風は涼しい♪
景色は堪能出来ないが、走るには調度よい。

さて今日はどこまで行こう。  風任せである。
猿払(さるふつ)のキャンプ場を後にし、少し先のエサヌカ線と言う道を走る。
ただただ何もない。
電信柱さえない海沿いの一本道だ。

しかし、エサヌカ線に入ると間もなくして雨が降り出した。



雨降りの何もない一本道はちょっと退屈だ。
それでも東の空の切れ目からは僅かながらだが青空が見え隠れしている。
そのままエサヌカ線を走り抜け浜頓別(はまとんべつ)と言う街に入った。

セイコーマート。  セコマと略されたり。
セイコマと呼ばれたりしている北海道オリジナルのコンビニだ。
他のコンビニは大きな街にしかないが、セイコマは50㌔間以内に必ずある。
北海道を旅する者にとってのオアシスだ。

今日もここに寄り、飲み物や翌日分の朝食用パン等を買い込む。

そして。  ここで。  ヘスに会った。
彼は日本語を自在に操り、イントネーション以外は完璧だった。
ヘスもサーフィンをするらしい。  ここ浜頓別に住んでいるそうだ。

話しは逸れるが。  日本語の上手な外国人さんと話していると。
日本語で会話をしているにも関わらず。  自分が英語ぺらぺらな気分になるから不思議だ。

話しを戻す。
ヘスは冬もサーフィンするらしい。
『じゃあ冬はドライスーツで海に入るんだ!』  『チガウヨ!ボクハウェットスーツダヨ。』
『え!?ドライスーツ着ないの!?』  『ダイジョウブダヨ!ワタシハアラスカカラキマシタ!』
と…。
アラスカから来れば真冬のオホーツク海も楽勝らしい…。
ヘスはすごく明るいく陽気な人だった。



さて。
相変わらず順調だ。  何が順調かと言えば道のりがだ。  多少の起伏はあっても全く峠はない。
お陰でぐんぐん距離が進む。
お昼過ぎには今日の目的地に着いてしまっていた。

ここまでで既に70㌔位走っている。
が。
ん~。  まだ行けるな♪
この先にある雄武町(おうむ町)を目指す事にした。
走り出すと、以外と足が疲れている事に気付いた。

が。
既に走り出してしまった以上、50㌔程先の道の駅を目指すしかない。
しかし。  50㌔と言えば岩手での一日の平均距離より長い。
それを日没までの後6時間で走ろう!と計算をするのだから。
いかに岩手の45号線がきつかったかがわかる。

相変わらず天気はコロコロ変わる。  曇ったりパラパラ小雨が降ったりと。
15時頃だっただろうか。  急に青空が広がりお日様がキラキラと照って来た。

濡れた路面が眩しい。



アスファルトから湯気が立ち夏の匂いがした。

そう。  この時すでに…  狂騒曲の序曲は始まっていた。

雨上がりの蒸し暑い午後。  ヤツラは自分に標的を定め。  そして着実に忍び寄っていた。

ではまた!
と、ここで話しを終える訳にはいかない。
最初の異変に気付いたのは足もハンパンになり緩やかな登り坂さえしんどくなって来た頃だった。

ペダルを漕ぐ足元に何かの影が見え隠れしている。
と、次の瞬間。  チクチクっと鈍いが確実に痛みとわかる感覚が襲ってきた。

痛っ!
痛みを感じた箇所に目をやると。  そこに小さな灰色の何かがへばり着いている。
反射的に払いのける。
『痛ったいなぁ~!もう!』と自分。
そのまま走り続ける。  ふと、気になり再び足元に視線を向けると。  ヤツが足元を旋回している。

虻(あぶ)だ。



自分がヘロヘロになり登り坂をのろのろと走っているをいいことに。
剥き出しになっている足を攻めてくる。
こっこれはマズイっ!  と、疲れた体に鞭を打ち虻を振り切るべく全力でペダルを漕ぐ。
それでもヤツは必死で追い縋ってくる。

頂上だ!
つまりはこれから下り坂♪  いくら虻でも坂を下るチャリには追い付かないだろう。
いつもは下り坂ではペダルは漕がないが、虻を振り切る為にはしたかない。
ちょっと頑張ってスピードを上げる。
足元を見ると。  ヤツラの姿は消えていた。

ふぅ~。  慌てさせやがって♪  と、振り切った安堵感でいっぱいだ。
しかし。  下ればまた登る。
これはここまでの旅で知った自然の理だ。
ダラダラと続く登り坂。  さっきの無理もたたり、足はつらい。

ん?
その時。  また足に身に覚えのある鈍い痛みを感じた。
虻だ。  また虻だ。
自分のスピードが落ちたのをいいことに、また襲撃してきた。
しかも今度は3匹でだ。
何をっ負けるかぁ!!  と、必死に坂を登り虻を振り切りろうとする。
ある程度スピードが出れば追ってはくるが噛み付きはしないようだ。
再び鞭を打ち坂を登る。

下り坂。  虻を振り切る。  ×3
そういえば。
礼文島のキャンプ場で管理人のおじさんが言っていた。
虻は黒い物と汗の匂いに寄っ来ると。
つまり。  日に焼けた自慢の小麦色の肌。
そして、高湿度&太陽の照り付ける中での激走による大量の汗。
お腹を空かせた虻にとっては。
カステラと牛乳がセットで目の前に置かれているのと同じ事なのだ。

それはヤツラも必死になる。
登り坂を向かえる度にその数が増えて行く。  3匹。  5匹。
おかしい。
絶対おかしい。
だって下り坂では完全にヤツラを振り切っている。
なのに虻は減る所かどんどん増えて行く一方だ。

再び登り坂での虻の猛攻を凌ぎ、下り坂で足元ではなく後ろを振り返って見た。
虻はいない。
正確には飛んでいる虻はいないだった。

ヤツラは。  下り坂で振り切られそうになると。
ハコブンダー(リアカー)にくくり付けたサーフボードにピタッ♪っと張り付き。
自分のスピードが落ちるまでのんびりと羽を休めていたのだ!

虻…お…恐るべし…。  繰り返される虻とのドックファイト。
登り坂では足を狙われ。  平坦な道では自分の後ろを群れを成して追いかけてくる。
それはまるで。  本気のパン食い競争だ。

残念ながら自分はあんぱんだ…。  しかも逃げるあんぱん。
だから余計に参加者達はムキになる。
そして下り坂ではピタッと張り付き優雅に休憩だ。

最終的には20匹近い虻に追い回されている。  もう疲れも限界だ。
でも立ち止まれば。  確実に。  喰われる…。

しかし…  疲れた…  もうダメだ…  これ以上走れな…い…

と、思った時!
まさに恵みの。  恵みの雨だった。  霧雨が降り出した。  お天気雨だ。
虻の食欲を奪ったのか?  雨が降ると飛べなくなるのか?
さぁ~っと自分の周りから姿を消した。

助かった!!  これでようやく。  地獄のパン食い競争は終わったのだ。
お天気雨はもう一つ自分にプレゼントをくれた。

大好きな虹だ。



くっきりと鮮やかに現れた虹を見ながら。  虹って漢字は虻にそっくりだ♪
と、変な事に妙に感心している自分がいた。

しかし。  あの憎っくき虻達も。  今日の自分にとっては好材料だったのかもしれない。
なんと今日は130㌔近く走り。  明日の目的地。
紋別(もんべつ)市手前の興部(おこっぺ)までたどり着いてしまったのだから。

*おうむの道の駅で出会った日本一周チャリダーのH君と、大学生の三人組女性チャリダーさん。
お互い良い旅をしましょう!!



追記。
日記をやっと書き終えて、『あぁ~今日は本当に疲れたなぁ!』とパンパンになった足をマッサージ。

そうだ!
たまには足をいたわるか♪  と、伊豆でツッチーからもらったインドメタシン1.0%を足に塗る。
その時だった。

ヒリヒリヒリヒリっ♪

なっなになに??  あっ…そうだ…
虻に噛まれた傷口に、1.0%のインドメタシンが染み込んで行きましたとさ♪

ちゃんちゃん(笑)

ではまた!

 

第九十七話  Great Surf jorney Day-20 
“ HOKKAIDER ” 08-10

今日は。
紋別郡(もんべつ)湧別町(ゆうべつ)にある五鹿山キャンプ場まで走った。

テントを張り終え。  パスタを茹でて。
大好きなたらこスパゲティーを二人前たいらげ大変満足している。
ちなみに今日は70㌔位しか走っていない。
いかに昨日の虻のプッシュが凄かったかがわかる。

なぜこんな事をダラダラ書いているかと言うと。  今日は書く事が見当たら無いからだ…
デシカメのバッテリーも昨日の夕方に無くなり。  結局今日も充電できないままだ。

なので画像もない…

さて困った。  何を書こうか。
このまま。  『今日はとても良い天気で、サロマ湖の手前の湧別町に着きました!』
と、日記を書き終えてしまうのはあまりにも忍びない。

しかし。
朝の9時~17時まで走っている間、何を考えながら延々と続く道を走っていたんだろうか。
それは。  こんな事だった。

北海道入りする前は。  チャリダーはおろかバイカーさんにすらほとんど出会わなかった。
それが。  北海道入りしてから。  毎日のようにチャリダーに出会う♪
今朝もテントの撤収をしている時に隣にテントを張っていた一人のおじちゃんチャリダーと仲良くなり。
おこっぺの道の駅では大学生チャリダーと、昨日の三人組チャリダーとも会った。

そして。  走っていれば反対からくるチャリダーに1~2時間に一度はすれ違い、挨拶を交わす。
これって。  すごい♪
世の中にこんなにもチャリダーがいたものかと驚きを隠せない。
多分。  北海道を放れた途端に。  ぱったりとチャリダーには会わなくなるだろう。

だから。  寂しい思いをするそれまでの間。  もっともっとチャリダー談義に花を咲かせなければ♪
しかし。  もっとすごいのは。  そのバイカーさんの数である。
時期的なものもあるのだろうが。  国道を走る地元の方の車より多いのでは?と思ってしまう。

スタイルはそれぞれで。  ハーレーでドカドカ走っている人。
オフ車に荷物をテンコ盛りにして走っている人。
一人で走っている人もいれば。  数台で連なって走っている人達もいる。

そのバイカーさんを総称して。  HOKKAIDERと言う。
*HOKKAIDER(ほっかいだぁー)=北海道をツーリングするバイカーさんのこと。

そして彼らには暗黙のルールがあるのだ。
それは。
[すれ違う時はHOKKAIDER同士挨拶をしましょう♪ルール]だ。
バイカーさん同士はもちろんのこと。
チャリダーにも手を振ったりガッツポーズをしてくれる心優しいHOKKAIDERさんも多い。

たいていはグッド!パーが挨拶だが。  中にはピースや拳を突き上げてくれる人。
追い越し際に『ガンバレよ!』と声をかけてくれたり。
走行中のバイクにも関わらず両手を振ってくれるつわものもいる。
一緒のすれ違いだが心の通う嬉しい瞬間だ。
自分はそのパーグッド!にAlohaのポーズで答えるのが今までの常だった。
しかし、日に日に増して行くHOKKAIDERさん達。
今日辺りは確実に100台以上と挨拶を交わしている。

ふと。  お決まりのAloha~♪で挨拶を返すのに飽きてきた。
グッド!とかパーとかチョキとかグーとか。

これって…。  なんだか。  じゃんけん見たい♪
と、思ったら最後。  もうすれ違い様の挨拶がじゃんけんに思えて仕方なくなってきた。

大変失礼かとは思いはしたが。  やるしかない!!  これは勝負だ!
と。
こうして一緒のすれ違い様の真剣勝負が始まった訳だ。

もちろんグーにはパー。  チョキにはグー。  パーにはチョキで、グッド!にはAloha♪
そんなルールでゲームの火蓋が切って落とされた♪

反対車線の遥か先にバイカーさんが見える。  徐々に近付いてくる。
ドキドキ。
バイカーさんが自分の姿を確認し、その左手が僅かに動いた時が勝負だ。

えい!チョキ  ぶぉぉぉんパー   おぉ!!勝った!勝った勝った♪  と、こんな有様である。

もちろん負ける事もあれば、引き分けもある。
しかしこんなにエキサイティングなゲームはない。
日本中から集まってくる見ず知らずのバイカーさん達と一度限りのじゃんけん大会をしているのだ。

結局。  今日はついついこのゲームに夢中になってしまい…。
いざ日記を書こうとした時に慌てふためいた訳だ…

皆さん。  こんなブログを最後まで読んで下さり誠にありがとうございました。
あっ!
最後に一言だけ!

台風4号がここ北海道に迫っていると、たくさんの方から連絡をいただきました。
情報提供ありがとうございます!
何かを期待されている方もいらっしゃるようですが、その期待には答えず、キチンと避難しますのであしからず(笑)

皆さんも台風には十分注意してくださいね!  自然には絶対、敵いませんので。

ではまた!

 

第九十八話  Great Surf jorney Day-21 
“ 水深1cm ” 08-11

夕方、網走まで到着。

稚内を出た時はここまで1週間近くかかると思っていた。  が、4日で着いた♪
そして20日ぶりに宿をとった♪  しかもベット♪

ベットとなると、千葉の一宮でワールドカップ観戦の為だけに泊まったペンション・トド以来だ。
まずは携帯やデジカメを充電♪充電♪  おまけに体も充電だ♪

さて話しを朝へ。
今朝、目覚めると。
昨日はそこら中に張り巡らせれていたバイカーさん達のテントはすでに2~3張りしかなく。
なぜか慌ててテントを撤収。  まだ朝の7時半だ…。

怪しい曇り空の下、湧別のキャンプ場を出発した。
走り出してすぐに雨が降り始めた。
『あぁ~よかった~♪』とは、雨が降り出す前にテントを撤収出来た事がだ。
雨の中の撤収作業は辛い。
整理整頓が大の苦手な自分にとってはそれだけでも大変なことなのに…。

いつもは嫌いな雨も。  虻に追いかけ回される辛さを思えば恵みの雨。
なぜだか今日は雨具を着ようとしない自分。  体を濡らす雨が涼しくて気持ちいいのだ♪
もちろん着ているTシャツは雨に濡れるが、カッパを着たところで、どの道汗でびしょびしょになるのだ。
なら、このまま雨に打たれても快適に走れる方を選ぶ。  それはごく自然な選択な訳だ。

雨は強さを増し、路肩や路面の轍に水溜まりを作って行く。
下り坂。
ある程度のスピードで走っていると。  前方に巨大な水溜まりを確認。
普通なら避ける。  今までなら避けている。
が。
そのままの勢いで水溜まりに突入!

うぉりゃぁ!!♪

ビャァっと水しぶきが上がる♪  その水しぶきを避けるように足を開く。
ちょうど跳び箱を飛ぶような感じだ。
タイヤから伝わる感覚と水を切り裂くその音がたまらない♪

一度覚えた楽しみはやがて快感になっていった。
水溜まりを見つける度にそこに飛び込んで行く。
水溜まりはまず、その面積よりも水深が重要らしい。
なんの話しかと言えば。
同じ波は二度と来ないように、水溜まりにも色々あり一つ一つに個性がある。
あまりに深い水溜まりは、スピードをロスし過ぎてしまい。
ビャァっと感があまりない。  厚くてタルい波に似ている。
そして浅過ぎてもビャァっと感はあまり出ない。  小さな波に乗っている感じだ。

恐らく。  水深1cm。  これがベストだ。

そしてある程度の進入速度(時速12~3㌔)で水溜まリングすると!
ビャァー!!っと最高のスプレーが飛ぶ訳だ。

そして最後にサイズだ。
その水深のまま距離が1.5㍍から2㍍位あると。  その水溜まりは。
【THE◎水溜まり】と呼ぶに相応しい水溜まりとなる。

いい歳の大人だが。  楽しいものは楽しい。  それでいいのだ。
そして。  時として。  走行中の車から強烈な洗礼を受ける事がある。
が、今日はそれさえ楽しかった♪
大型車があげる水しぶきをバサァっと浴びる度に。  ヒュー♪ヒュー♪言っていた(笑)

もうお気づきの方も多いとは思うのだが。  
利尻島を後にしてからの自分は。  少し変わった。

どんな事も。  どんな状況も。  楽しもう♪    と。

どんなフィールドでも楽しむ事が出来たら♪  それは最高なのだ。
と、そんな気持ちを持てたのは。  波乗りをし、山に登り、海を渡り空を飛ぶ。
利尻島のTOSHIYAさんの影響である事は言うまでもない。
多分。  心に余裕が無いときの自分なら。
今日の日記は最悪なものとして記録される事になっていたと思う。

ちょっとしたことなのだ。  ちょっとした自分の気持ちの持ちようで。
一つしか存在しない目の前の現実は。  どんな風にでも変える事がデキルのだ。
そんな考えを与えてくれたこの旅と出会いに感謝しつつ。
今日の日記を書き終える事とします。

ではまた!

 

第百話  Great Surf jorney Day-24 
“ 峠 ” 08-13

台風一過の澄み切った空はいつもより青さを増し輝いていた。

出会い・別れ・再会を幾度と無く繰り返して来た自分達は。  もう別れを悲しんだりはしない。
『きっとまた会えるさ~♪』と。  そう信じて疑わ無いからだ。

旅の途中で。  人生の途中で。  一瞬かもしれない。
でも、お互い共に旅をし。  これまでに共有した時間は。
掛け替えの無いものであり、この空のように輝いた時間だった。



それぞれの旅立ちだ。

北を目指す旅人と。



東を目指す旅人と。



…。   ちょ!?ちょっと待ったぁ!  逆!逆!

と、くだらない事もできる仲になった自分達は。
この先の旅路で再会出来ずとも、いずれまた顔を合わすだろう。

それでいい。

さて。  今日は斜里(しゃり)と言う街まで来た。  網走の隣の街だ。
つまりは対して移動していない。
この先の知床(しれとこ)羅臼(らうす)越えの前に一度自転車の整備やら、溜まった洗濯物を片付けたい。
なのでこの旅2回目のライダーハウスに早めに入りバタバタと色々片付けた。

ライダーハウスとは旅人の為の簡易宿泊施設である。
今日はここでいつもとは違った旅人と交流して見ようと思う訳だ。

自分の今後の夢の一つに旅人が集う宿を開きたいという思いがある。
自分が旅をしていなくてもその日常に旅を感じていたい。

色んな経験をし。  一つの価値観に捕われず。  そこで出会う旅人の道標のようになりたい。
そんな贅沢な夢だ。

以前。  ある人から言われた。  『この旅が終わるまでに次の目標を決めといた方がいいよ!』と。
自分の心の中では朧げに決まっていた。  が、まだ声に出しては言えない。
自分の夢を声に出して。  言葉にして語れるようになった時が。  夢が目標に変わる瞬間だ。

今。  その瞬間を待ち続けている。  まだ旅を折り返したばかりで。 些か気が早いかもしれない。
今はまだ夢。
でも一つの夢を実現している今。  夢は雲を掴む話しでは無いだ。
と、思えるようになっている。

夢は叶うものではなく。  叶えるもの。
どっかの壁にそんな文字が書かれた紙が貼ってあった。

その通りだ。  待っていても。  考えていても。  何も始まらない。

~だから歩いて行くんだよ♪
一日一歩♪三日で三歩♪  三歩進んで二歩下がる♪~

三日で一歩進めば十分だ。  最初の一歩さえ踏み出せば。
道は、その夢まで続いていく。
真っ直ぐでなくても。  平坦でなくても。  明日か明後日。


北海道沿岸ルート最難関。  羅臼峠を前にして。  不安はなく。
なぜか。  険しいであろうその道のりに。  ワクワクしている自分がいる。
だって。
それを越えればまた一歩。  目指すものが近づくのだから。



では!

 

第九十九話  Great Surf jorney Day-23 
“ 嵐の再会 ” 08-12

彼と会ったのは岩手県も間近かに迫った宮城県北部だった。
背中に背負ったザックには日本一周中と書かれていた。

うわぁ!♪旅人発見!!
その時の自分の興奮ぶりは相当だった。

それから。  岩手に入り、青森の八戸から北海道の苫小牧までほぼ一緒に旅をした。
雨の中二人で街をさ迷い宿を探した事もあった。
キャンプ場での熊騒動も、青森のTさんに二人でほやをご馳走になったり、道の駅で野宿した事もあった。
歩き旅の彼と自転車の自分。  なぜか同じペースで旅をした。  
10日間位、苦も楽も共にした旅友だ。

北海道に入り。
お互いの進む道は時計回りと反時計回りとなり、苫小牧のフェリーターミナルでそれぞれの旅へと再出発した。

その時したひとつの約束。  『どっかで会った(再会)時は一緒に飲もう!』と。
北海道に台風4号が近く中、着実に二人の距離は縮まっていた。

そして今日の夕方20日ぶりの再会を果たした訳だ。

自転車日本一周      ~ サーフィンの旅 ~-DVC00083.jpg

台風が迫る夕方。  ふたりの再会を祝うように。
西の空は赤く燃え、東の空には虹が架かった。





明日からはまたふたりの距離は離れていく。

今を楽しむ為。  今日の日記はここまでにしよう。

では!

 

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