~自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録~
第百六二話 “ 序章 ” 10-22


西の島に向かう船に乗ったのは。
ほとんど勢いだった。

船のゲートが開かれた時。

なぜだかわからないが。
今までとは違う妙な緊張感があったと記憶している。

ともあれ船に乗り込む。
予想以上に乗客が多い。
空いているスペースが見つからず。  船の前の方へ前の方へと。。
なぜかこっちは人もまばら。
最前列の端っこのスペースがガラガラだ。
なぜこの場所が空いていたのかは後で身を持って知る事になるのだが。
もちろん今は何も気付いていない。

よかった~♪
と、くつろげるスペースを確保し一安心。

出港の汽笛が鳴った。  デッキに駆け上がる。
離れて行く港。

天気が良ければ海に沈む夕日を見られただろうが。
あいにくの曇り空。  相変わらず風も強い。
船室へと戻り。
徐々に暗くなって行く外の景色を眺めていた。

そして。
いつしか寝てしまっていたようだ。

大きな揺れで目を覚ました。
まるで公園にあるシーソーの如く。  船首が波で持ち上がり。
ど~んど~ん♪
と、船底が海面を叩いている。  この大きな船がだ。

あぁ。
湾を越えて外洋に出たんだなぁ~と。
その時はその程度しか思わなかった。
おりからの強風である。  当然、海は大シケだ。

今まで。
様々な場所で船に乗り。  旅を続けて来たが。  ここまで揺れたのは初めてだった。
しかしながら。
どうする事も出来ないのでそのまま横になった。
が。
上下左右に振り回される体。
波乗りを初めて早10数年。  ヘナチョコでも波乗人が。 

波に。  酔った(笑)

先に書いたように。  どうする事も出来ない…。
ひたすら気分を紛らわそうと必死になる。
心の中で歌を歌おう♪
そう思い。  出てきた曲は。  海は広いな大きいな~♪
と。
頭からは荒れ狂う海が離れない…。
そう言えば。
北海道の山道で心細くなった時は。

ある日♪  森の中♪  熊さんに♪       出会いたくない…。

得てして切羽した状況下では発想は限られるらしい。

いよいよ気分が悪くなり。  冷や汗まで出て来た。
ヤバい…このままでは…
慌てて、万が一に備えWCへ。
向かう途中。  後部席で。  平然とくつろいでる島民の方達を見て。

あっ…。
皆さんは船のどこが揺れるのかを熟知していたのだ。
遠足の時。  酔いやすい子供は。  タイヤの近くの席を避けるように。
なんでこんな単純な事に気付かなかったのだろう。

そもそも。
自分が船酔いするとは思っていなかった訳だが…。

逃げ込んだWC。  四角い狭い空間。
かえって具合が悪くなり。  風にあたろうと。  フラフラしながら外のデッキに向かった。

ベンチでダウン…。

こういう時の1時間は。  永遠に感じる程長い。
しかし島が近づくにつれ。  揺れも治まり。  なんとか復活。

船旅を楽しむ余裕もないまま。
自転車日本一周波乗旅的西方島波見聞録は幕を切り。
街の明かりも無く。


ほぼ真っ暗な西の島に。
フラフラの状態で放り出されたのだった(笑)


続く♪