第百六十話  “ 猫の恩返し ” 10-20

昨夜。
野宿した道の駅。  とても賑やかだった。

ブォォンブォォン♪  と(笑)

朝。
目覚めて。  眠たい目をこすりながらテントを撤収。
一通り片付くまではなんだか落ち着かない。
散らかすのは大の得意。  整理整頓は大の苦手。
しかし。
収納術には長けている。
押し込み式収納術(笑)
大抵のモノは押し込めば何とか収まる♪

今日もぎゅ♪ぎゅ~う♪と荷物を押し込みパッキング終了。
ささやかな朝食を済ませ。
いざ出発。
昨日、道の駅でパンフレットを見ていたら。  ここ日比水道を龍馬さんも船で通ったらしい。
この先にフェリー乗り場があり。  伊万里の先の方まで行ける。
それで行こう♪  と、フェリー乗り場へ。

到着したフェリー乗り場で。  切符売場のおじさんが。  ニコニコと話しかけて下さった。
『さっき坂走っとったな~早か~もう着いたとね~』と。
切符を買うと。
ハコブンダー料金はおまけしてくれた♪

待ち時間があるので。  近くの港をうろうろしていると。  さっきのおじさんが。
いろいろ案内してくれた。

おっおじさん…仕事は?
と、こっちが心配してしまう。

カマスの干物。

おもむろにおじさんに。
ここの日比水道を龍馬さんも通ったんですよね!と聞いて見ると。
『あぁ。日比水道はあの橋の下。こっちは通っとらんとよ(笑)』と…。

ともあれ。  フェリーに乗り込む。
島の方達に盛大に見送られ出発した。


のは、自分では無く修学旅行の生徒さん達。

どうやら。
体験学習と言った感じで、島の民家に宿泊する民泊とやらがはやっているらしい。
賑やかな船内。
あっという間に到着してしまった。

そして。  その後。
おそらく、陸路で行ける一番西の島まで行って見ようと。
自分でも。
なぜこの島を目指しているのかわからなかったが。
せっかくだから♪
と。
道の駅も一カ所ある。
寝る場所には困らなそうだし。  と、完全に寄り道だ。

しかし風が強い。
ここしばらくは穏やかな日々が続いていた。
一度、ちらっと雨に降られた日はあったが。
鳥取と島根の境を走っていた時以来雨は降っていない。
どんよりとした黒い雲が不気味だ。

話しには聞いていた。  長崎は坂の街だと。
その通りだ。

坂・坂・坂。

最近は無理に坂をこいで登らない事にしている。
無理にこいで登ると膝が痛くなる。

途中。  一休みしていると。
にゃぁ♪と。
猫くん達が群がって来た。

お腹を空かせているのか。
目で何かを訴えてくる。

自分もたくさんの人達にお世話になって来た。
その恩返しを♪
と。
懐に隠し持っていたパンを。

その後。
出島より以前に外国との貿易で栄えたと言う街を越え。
道の駅のある、その昔遣唐使の人達が。

ここまで来たら一安心♪  と、一"息着き"。  
立ち寄った島へ。  恐ろしく風の強い橋を渡りたどり着いた。
しかし。
到着したものの。  諸々の事情と。  この風の強さに。  ちょっと凹んでいた。
テント張ったら…飛ばされるな(汗)と。

あいにく。  風をかわせる場所にいいスペースがない。
引き返そうと思っても。  もうじき日が暮れる。
腹をくくるしかない。
今夜は冷えそうだと。

そんな時だった。
さっき道の駅の入口ですれ違った時に挨拶をしたおじさんが話しかけてくれた。。
道の駅の駅長さんかと思い。
『一晩だけ野宿させて頂いてもいいですか?』と聞いてみると。
駅長さんではなかった(笑)
しかし。
『大丈夫だよ、けど今日は風が強いとね』と心配そうな顔を。
と、そこまでは旅をしていると良くある光景だった。

10分後
さっきのおじさんが。  ニコニコしながら戻って来た。
『安心しなさい!今日の寝る場所を確保したから♪』と。

…え?

『小屋みたいな所だけど、そこでよかったら♪』
どんな場所でも屋根と壁があれば有り難い♪
『ありがとうございます!』と、お言葉に甘える事にした。
そして。
おじさんの車の後を追いかけ。  一軒のお宅にたどり着いた。
そこにはおばさんがいて。
『さぁどうぞ!』  こっちこっちと、そんなそぶりを。

坂を下ると。
おぉ!  ガレージだ♪
『そこに自転車おいてね。』と。
ここなら風も、もし雨が降っても大丈夫だ♪  と、思っていたら。
隣にある部屋に案内された。
『なんにも気にせんでいいからここでゆっくりしなさい♪』と。

え?
いやいや。

このガレージで十分です!とそんな気持ちだったが。
『普段使ってない所だから遠慮しないで』
と、その言葉に甘える事にした。

Mさんと。


KAYOちゃんことTさん。

Mさんに『なんか…ありがとうございます!』と言うと。
『ここは島だから♪』と。
島の人達はお互いに助け合いながら生活している。
困った時はお互い様♪  そんな意味合いだったのだろう。

Tさんが。
十日前に子猫を拾ったと言っていた。  ガレージにいるらしい。
その話しを聞いた時。  ふと、昼間の猫くん達を思い出し。
あぁ、あの猫くん達が恩返ししてくれたのかなぁ~と。
そう思った。

夜、Tさんが食事に招いてくれた。
車に乗りTさんのご自宅まで。
この島も今朝の島のように。  修学旅行の生徒さん達が民泊に来ているらしい。
そしてTさんのお宅にも広島からの中学生が泊まりに来ていると。

そんな訳で中学生の皆さんと一緒に豪華な夕食♪
この子達も。
修学旅行と言えども。  旅をしている。
日常の生活から離れ。  見知らぬ土地の見知らぬ島に来て。  島の人達の生活に触れ。
暖かい心に触れる。
その中で。
何をどう感じるのだろうか。

*広島の中学生の皆さん、夕食をご一緒させていただきありがとうございました!

夕食をお腹いっぱいごちそうになり。  生徒さん達にお礼を言い。
Tさんにさっきの家まで車で送っていただいた。
明日の朝は忙しいから、気にしないで出発してね!と言うTさんに。
精一杯のお礼を伝え、車が走り出し見えなくなるまでお辞儀をした。

*Tさん。本当にありがとうございました!感謝します。

部屋に向かう途中。  ガレージを横切ると。
私にしか近付かないと言っていた子猫が  ミャァ~♪と自分を出向かえてくれた。

Tさんに救われたもの同士。
ちょっと心が通じ合った気がした。

今日はそんな一日だった。

ではまた!