第百参十話  “ 迷走 ” 09-17

昨日お世話になった道の駅。
インフォメーションのおじさんがすごく良くしてくれた♪



朝、おにぎりやトマトをチーズ等など。  たくさん持って来てくれた。
*Sさんありがとうございました!

さて。
道の駅を出たのは9時過ぎだ。
理由は二つ。
一つは雨。
時折強い風を伴い激しく降る。  昨日すでに雨具はびしょびしょ。
乾いている唯一の服を着ている今。   雨に濡れる事は死活問題なのだ。

それからもう一つは。
新潟市内にある自転車屋さんと、アウトドア用品のお店に行きたいからだ。

早く到着しすぎると、都会の真ん中で待ちぼうけする事になる。

それは避けたい。

今、頭の中にある心配事は。  寒さに関する事が中心だ。
北海道では大活躍した二人用のツーリングテントは。
本州では重たいだけの無用の長物。
安くて軽いソロテントがあればそれが欲しい。

それから。
防寒兼雨具。
朝夕の冷え込みはダウンを来て寝袋に入ればそんなに心配はない。
が、雨が降った日の寒さはちょっと応える。
とは言えまだ9月。  この先を思うとちょっと怖い。

そしてハコブンダーの予備タイヤとブレーキシュー。
これはもうトイレットペーパーやシャンプーリンスと一緒。  日常的な消耗品だ。

ある程度の街じゃないと16インチのタイヤは中々揃わない。
そんなこんなで。  時間を気にしつつ。  雨の様子を見に行くと。
雲の切れ間に少し青空が。

よし!行ける!
と、慌てて身支度を整え道の駅のおじさんに挨拶し出発した。

街が近付くにつれ。  交通量は増え。  路肩は無くなり。
ガタガタの歩道を走る事を余儀なくされる。

そしてバイパス。
急に現れる自動車専用道に行き場を失う。

10時半頃だろうか。
未来にでも来てしまったのか。



高層ビルが今にも襲いかかって来そうな都会に到着。

都会は苦手だ…。
しかし。
人と物が集まる都会をでなくては中々必要な物は手に入れられない。

ジャグルをさ迷う。  強烈な視線を受けつつ。  右も左もわからない。
目指すお店がどこにあるかもわからない…。

横断歩道では左折する車にひかれそうになり。
狭い歩道では歩行者の人達の行列ができ。
バス停に立っているおじさんの突然のバックステップをギリギリ交わしたり。

迷走3時間。
ついに胃が痛くなり。  笑顔はとうに無くなり。

やばい…。  このままでは…  都会にヤラれる…
と、何の目的も達しないまま都会から逃げ出した。

しかし迷走は終わらなかった。
唯一の救いは街外れの自転車屋さんでタイヤとブレーキシューを手に入れた事だ。



*おじさんおまけしてくれてありがとうございました!

そのまま。  感覚を頼りに。  海を目指す。
なんのあてもないまま。

14時半頃。
自分の進むべきルートを見つけるも。
地図を見て。  相当な焦りが自分を襲う。  60㌔位進まないと道の駅がない…。

タイムリミットは3時間半だ。
ヤバい…。

この旅での毎日の最重要課題は。  いかに寝所を確保するかだ。
寝所にある程度のめどが付かないと。  ものすごく焦る。
そしてこの焦りは視野を狭くし、頭の回転も鈍くさせる。

『この先の道の駅まで行くしかない!』
明らかに無理のある選択をしてしまう自分。
チャレンジと無謀は違うとはわかっているが。
その判断さえつかなくなるのが焦りであり心の余裕の無さなのだ。

走り出す。
火事場の底力とでも言うのか。
自分でも信じられないほどの速度で走り続ける。

海辺の道に出るとオンショアに煽られ波が割れている。
しかしそれさえ横目で見る程度しか余裕がない。

さらに。
途中でサーファーさんが波乗りをしている。
普段なら必ず足を止め、のんびりと眺め、サーファーと話をしたり海に入らせてもらったりするのに。

それさえスルーだ。



そんな何かに追われて必死になっている自分に薄々気付きながらも。
もう走るしかなかった。

結局。  辺りが暗くなる頃。



無事に道の駅には到着出来た。

が。
迷いさ迷い。
焦り追われて。  通り過ぎた道のりに会ったであろう人と波との出会い。
一日の終わりになんの充実感も無く。  ただただ走っただけの日だった。
のだろうか?

そう考えてしまえば今日と言う日を全て無駄にしてしまう。

気持ちに余裕が無い事が。  焦りを産み。  視野を狭くし。
出会いの機会さえ無くしてしまう。

今日は散々な日だ…とは思わずに。
その事に気付いた事で今日を良しとしようと思う。

日々是好日。

では。