第七十五話 “ 轍 ” 07-15

ぷるるるる♪
朝、部屋の内線電話の音で目が覚める。
『あっおはようございます!』
『よく寝れた?朝ご飯用意してあるから、おあがんなさい♪』
と、おばちゃん。

結局、二食ご馳走になってしまった。
おばちゃんは言う。
『私はこういう風にしてあげられるから幸せ者だよ。したくてもできない人だっているでしょ?』
と。
『だから、おばちゃんに感謝しないで神様に感謝してね!』と。
そう言っていた。



*おばちゃん・おじいちゃん。本当にお世話になりました。ありがとうございました!
また、親切と優しさに触れた。  この恩をまた次に。

さて、小雨が混じる中走り出した。
しばらく走ると。  橋の下に車を停め何かをしている人が。
『こんにちは!故障ですか?』と聞いてみる。
まぁ、専門知識も無いので大した役にはたて無いが、力なら有り余っている。

すると。  『いやぁ。ちょっとライトの調整だよ』と、おじさん。
続けて。  『ちょっと一服していかんか?』と。
中野さん。



地元の建築士さんだ。
時間が経つのを忘れるくらい。  たくさん話した。
『貧しくても、心は豊かに生きなさい。』と。
『困ってる人がいたら、見過ごさない事。それが勇気だ。えばったり強がったりするのはそれとは違うんだ。』

昔はがき大将だったらしい。
『がき大将も大変だよ(笑)だって皆を守らなきゃならないからな!今はがき大将がいないんだ。大人数で一人をいじめたりな…。』
と。
『もし、どうしても困ったらいつでも連絡しなさい!青森でも、北海道でもどこでも行ってやるから!』と。

嬉しかった。  そして、中野さんに一つお願いをした。
もし、歩いて旅している子がいたら。  同じように声をかけて欲しいと。
中野さんと別れた後走り出した。

峠。
10%の勾配。



100メートル進むと標高が10メートル高くなる。
つまり。  角度は…えっと…   難しい話しはやめよう(笑)

しばらく進み、途中の道の駅で一休み。
KENGO君は先に進んでいるのだろうか?
それとも。
自分の後ろを歩いているのだろうか。
また会えたらいいのにな。  と、思って出発しようとすると。

ぷっぷ~♪  中野さんだ。
『お~い!歩いてる子がそこにいたぞ~!』と。
『えぇ!!』
中野さんの再登場とその言葉に驚いた。

待つこと5分。  KENGO君とも再会できた。  笑った。   大いに笑った。  再会が嬉しかった。
そして。
再会させてくれた中野さんに感謝だ。  あと少しで出発し、坂を下る所だった。

しばらく三人で話した。



彼の今日の目的地と自分の目的地は一緒だった。
再び夜に再会する事を誓いお互い出発した。

そして、今一緒にいる♪  これも巡り合わせだ。
無理に意味を持たす事はないが。  間違いなく意味のある事だ。
その意味を無理に考える事はない。
その時ではなくても。  後から。  あっ!なるほど♪   と、気付く時がくる。
そういうものらしい。
ここまでの旅で学んだことだ。

さてさて。
道の端っこをを走っていると、道には轍がある事に気付く。



轍に乗っている時は気付かない。  が。   外れた道を進むと、その存在に気付く。
轍に近づくと。  ハンドルは取られるし、道もガタガタしたりする。

気付かない内に轍に乗って走っていた今まで。
轍から外れた道を進むのは怖いと思った。  そこを外れれば安定はないからだ。
逆に。
がっちりした轍にはまって進んでいくと。  その轍から。  安定から抜け出せなくなる。
でも。
そこから抜け出せば。  道は自由だ。

ただ。  綺麗な道ばかりは走れない。
それでも自分が進んで行く道を自分で選べること。
そこには。  楽しさや喜びがある。  新しい道を創って行く楽しさがある。
まだ、だれも通ったことの無い道を進む喜びがある。
どちらの道がいいとかではない。  好きな道を進めばいい。
ただ好きな道を進んで行くには。  轍から抜け出す必要があるのかもしれない。

そんな事を考えながら。  走ったり押して歩いたり。  今日はそんな日。

そんな道のりだった。



ではまた!

~岩手県釜石辺りより~