~ちゃりんこ日本一周サーフィンの旅 番外編 ~歩旅最果島紀行~
第百九十六話  “ バックパッカー ”  11-27

昨日キャンプ場に戻ってからもTAKAさんにはさんざんお世話になりっぱなしだった。
テントまで張ってもらい。
結局自分は7時過ぎには眠ってしまったようだった。

翌朝目覚めると。
相変わらず左足は曲げられないが、腫れも大分引き。
その分先に痛めた右膝の痛みが戻っていた。
が、明らかな回復傾向にホッと胸を撫で下ろした。

TAKAさんは今日の夕方石垣発の飛行機で羽田に向かう。
一度かけた迷惑だ。
もう一日だけTAKAさんに迷惑をかけよう(笑)
と、一緒に石垣に向かう事にした。
                                                  荷物のパッキングも終わった頃だった。
TAKAさんがこう言った。
『やなっち…俺の不幸話聞いてくれる?』と。
どんな話かと身構えると。
『実はさぁ~昨日…』
え?
TAKAさんの身にも何か起きたのかと思いきや。
『レインコートに携帯入れたまま…洗濯しちゃった(笑)』
あぁ…。
                                                  まぁそんな訳で。
二人にとって今回のマヤグスクの滝は。
様々な苦い思い出に彩られる事になったようだった。
しかし二人ともまた行きたい!とも思っている。
それは。
キャンプ場の管理人さんがしてくれたこんな話しがあったからだ。

『マヤグスクの滝のそのさらに奥地に。幻の湖があるんですよ。』

女性がブランド物や限定ものに目が無いのならば。
大人に成り切れない大きな男子は。
伝説や幻に弱い(笑)
いつかまた。
この西表島に。
HさんやK1さん。
島の波と島の優しさ。
そして幻の湖とイリオモテヤマネコに会いに!
と、心に誓い。
10時30分発の石垣行きの船に乗り込んだ。


西表島を出発した船は鳩間島を経由し。


遊園地のアトラクションさながらの動きで石垣島に到着した。
彼女へのお土産を探すと言うTAKAさん。

ちなみに。
彼女さんとは世界一周中にエジプトで知り合い。
最後の一年を共に旅したらしい。
なんて素敵な出会いだろうか。

自分は離島ターミナル近くの安宿にチェックインした。
TAKAさんが空港に向かうまではその部屋で荷物を預る事にした。
TAKAさんが戻るまでの間。
自分はこの後の旅をどうするかを考えていた。
ここで旅を終えるべきかどうかと。

でも。
答えは最初から出ていた。
日本の端っこに絶対行く!
と。

この足の常態では。
本当にただそこに行くだけになってしまう。
が。
出来る事は出来る内に。
やれる事はやれる内に。
足を怪我したから日本の端にはいきませんでした。
では。
身を持って"生"を実感させてくれたマヤグスクに失礼だ。
不器用にでも。
ゆっくりでも。
まだ動かせる足が自分にはある。
日本の端を目の前にして。
今そこに向かわなければ。
BOSSがしたのと同じ後悔をいずれする事になってしまう。
そしてBOSSに二重の後悔をさせる事になってしまう。
はっきり言って無茶は承知だ。                                この足を引きずって行くのだから。

しかし不思議なもので。
そういう逆境に立てば立つ程。
目的意識はシンプルになり。
クリアになっていく。

自分の中に出ていた答えにモチベーションを上乗せした事で最後の力が漲って来た。
そんな時TAKAさんが買い物を終え戻って来た。
この後空港に向かうTAKAさんとの別れは近い。
バスターミナルまで一緒に行った。 

また一人になるのかと思ったら一瞬寂しくもなったが。
この出会いが与えてくれた様々な出来事が心に残っている事に気付き。
寂しさは感謝へと変わった。

バスの出発時刻になった。
命の恩人でもあるTAKAさんと最後に握手した。
昨日、山中で手を差し延べてくれた時のような力強さは無かったが。
自分より小さいはずのその手がやけに大きく感じた。
これが世界を旅した人の手なんだと。
バスに乗り込んでいくTAKAさんの後ろ姿を見て思った。
『TAKAさん…荷物…ひっかかってますよ…』と。
バックパックの大きさはきっとその人の夢の大きさなんだろう。
自分もいつか。
バックパックに夢を詰めて。
世界を旅してみたい。
と。
そう思った。

ではまた!

 

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